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 尿失禁には、出産や更年期などを契機に若い世代から出現する腹圧性、切迫性、またはその混合性のもの、尿意の知覚がなく、残尿が多いことを訴える機能性、または器質性などの神経因性のものなど、いくつかのタイプがあるが、神経因性の尿失禁では、いかに排尿の管理を行っていくかが問題である。超音波膀胱尿量測定装置は、主として、このような神経因性尿失禁の患者に有用であると考えられる。すなわち、入院や在宅の神経因性の排尿障害者に超音波膀胱尿量測定装置を使用すれば、自然体で膀胱尿量を把握でき、確実な排尿が可能となり、さらに排尿にともなうストレスも緩和され、排尿のQOLを高上させることが可能であると考えられる。また、患者本人はもとより、介護する看護婦や家族にとっても尿失禁ケアが安楽になると考えられる。
 しかし、超音波膀胱尿量測定装置には、次のような問題もあり、今後の改善が必要である。第1は、腹部に大きな切創痕がある患者の場合などでは、超音波膀胱尿量測定装置は違和感があり、患者が装置に慣れるまでにやや時間を要することである。第2は、現在わが国で販売されている超音波膀胱尿量測定装置は、米国から輸入されたものであるが、排尿障害者が個人で購入するには、やや高価であることである。第3は、今回の研究では有意な差は認められなかったが、Resnickらの研究において指摘されているように、肥満者では膀胱尿量の測定が困難であることである。
 次に、排尿障害者の蓄尿機能や排泄機能の特性については、健康な女子学生と尿失禁経験者との膀胱尿量と排尿量とを尿意の有無によって分けて分析した。その結果、健康な女子学生では、尿意がある群と尿意がない群との間で膀胱尿量には有意な差が認められ、また排尿量についても、統計学的に有意な差は認められなかったが、尿意がある群の排尿量が、尿意がない群のそれをかなり上回っていた。これに対し、尿失禁経験者においては、膀胱尿量、排尿量ともに、尿意がある群と尿意がない群との間で有意な差は認められず、平均値はいずれも90〜100mlであった。
 このことは、尿量が100ml前後でも尿意が生ずることを示しており、排尿障害者では、蓄尿機能が低下していることを示唆している。この結果、100ml前後で排尿することが習慣となり、1日の尿量を1,200〜1,500mlとすれば、排尿回数は10回以上となって、いわゆる頻尿になるのではないかと考えられる。このことから、尿失禁を改善するためには、蓄尿力を高めることが重要であり、具体的な看護介入としては、尿失禁体操などが有効であると考えられる。

?.結 語
 今回の研究によって、次のことが明らかとなった。

 

 

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