3.左室拡張機能
DM患者のCTG反復配列の数は200から1667に及んだ(平均765±403)。年齢、有症候期間、そしてCTG反復配列を説明変数として選択し、拡張能を予測するため変数選択一重回帰分析した。
EとAを予測するのは、患者の年齢による重回帰関数が適合よく(E=127.4−1.40×年齢、A=35.8+0.37×年齢;各々 P<0.005,P<0.05)、DTとIVRTを予測するのは有症候期間による重回帰関数が適合良かった(DT=195.0+1.00×有症候期間、IVRT=76.9+1.00×有症候期間;各々 p<0.05、p<0.01)。しかし多変量解析(ロジスティック回帰分析)では拡張能を表すドップラーパラメーターに影響を与える独立した因子で統計学的に有意なもの(オッズ比>1.5)はなかった。
4.心筋の伝導異常
DM患者で伝導異常を8名(42%)に認めた(表2)。非特異的心室内伝導障害2名、一度房室ブロック1名、一度房室ブロックに非特異的心室内伝導障害を伴うもの2名、一度房室ブロックに完全左脚ブロックを伴うもの2名、一度房室ブロックに完全右脚ブロックを伴うもの1名であった。伝導異常を有する患者は有さない患者と比較し、有意に有症候期間が長かった。また伝導障害を有する患者は、大きなCTG反復配列を有し、年齢が高い傾向にあるが、これらはいずれも統計学的に有意でなかった。
5.骨格筋障害と心筋の拡張障害
正常対照と有意差を認めた拡張能のパラメター(E,A,DT,IVRT)で骨格筋重症度スコアと有意な相関を認めたのはEだけであった(表3)。IVRTは骨格筋重症度スコアが大きいと長い傾向はあるが、統計学的に有意でなかった。
? 考案
1.骨格筋障害
DMでは神経学的重症度はCTG反復配列と相関しているといわれてきた(22,23)。本研究でも同様の結果が得られた。神経学的症状の初発年齢もまた、CTG反復配列と相関があるといわれている(22,23)。しかし、本研究ではそのような相関は認められなかった。その理由としては、本研究では先天性の患者や白内障のみで筋症状を欠く軽症型(minimal type)を除外しているからかもしれない。というのは、一般にCTG反復配列の大きさは成人発症の古典型と比較し先天型では大きく、軽症型では小さいからである。また、初発症状はミオトニアであったり、筋力低下であったり症例により様々であり、この様な神経筋症状の多様性もまた有意な相関が認めららなかった原因となっていると考えられる。本研究では骨格筋重症度スコアは、年齢・有症候期間とも正の相関を示しており、古典型DMではこれら因子がCTG反復配列とともに症状を決定する要因と考えられた。
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