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1-1 在宅介護サービスのあるべき姿
 在宅介護サービスを地域住民に対して適切なサービスとして効果的に提供していくためには、サービスの利用者本位に立って、地方公共団体を始め、在宅介護サービスにかかわる関係機関間での情報連携や安定したサービスの質の確保を図ることが求められる。
 地方公共団体にとって、在宅介護サービスを住民に的確に提供していくために、介護保険制度による介護サービスと従来の保健福祉事業や老人保健制度による保健サービス、一般福祉サービスを総合的にケアマネジメントするための仕組みが必要となる。
 そのため、介護保険制度の施行後も地域の実情を最もよく把握している地方公共団体が主体となって、福祉にかかわるシステムを構築することが必要となる。
 在宅介護サービスを提供していく上で中心となる介護保険制度は、在宅介護を重視し、在宅ケアを主とする福祉政策とサービス提供を実現するものであり、病気・障害・寝たきりの予防やリハビリテーションの充実、さらにサービスを利用する人が必要なサービスを総合的に受けられるようにサービスを提供する人々(サービス提供事業者)が一体となって効率的なサービスを提供することが考慮されている。
 介護保険制度では、市町村等の地方公共団体が、原則、介護保険制度の運営主体となり、介護サービスの供給主体は居宅介護支援事業者やサービス提供事業者が行うことになる。また、都道府県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう必要な指導及び適切な援助をすることになる。
 しかし、介護保険制度は、これまで地方公共団体が独自に地域福祉サービスの一部として、サービスを必要とする住民に対して提供してきたサービスメニューをすべて包括するものではない。そのため、介護保険制度に含まれないサービスについては、地方公共団体が、介護保険制度の「横出し」や「上乗せ」のサービスメニューとして、地域の実情を把握しながらサービスメニューを検討する必要がある。
 また、安定した在宅介護サービスを提供していくために、地方公共団体は、地域のサービス提供能力を正確に把握する必要がある。現在、提供できる介護サービス量や求められている介護サービス量、さらに今後必要とされる介護サービス量を予測し、適切なサービスを提供できる環境を整備することが必要となる。

 介護保険制度では、サービス提供の供給主体は民間のサービス提供事業者が中心となるが、現時点では、地方公共団体は、民間のサービス提供事業者が地域にどの程度参入するのかを見極められていない状況である。介護保険制度の施行後も、地域住民に十分な福祉サービス環境を提供しなくてはならないという点から、当面は地方公共団体が、何らかの形で在宅介護サービスに携わっていくことが必要であると予想される。
 特に、介護保険制度において要介護認定を受けられなかった住民に対して、地方公共団体がどのような対応を行うかは、その地域の実情等によって異なってくる。また、同一の対象者に対して、介護保険に基づくサービスと新たな市町村独自の福祉サービス(従来からの措置制度で行ってきた介護保険制度のサービスメニュー以外のサービス)を提供する場合には、サービス提供の二元化が起こることも予想される。
 在宅介護サービスを提供していく上で、特に重要と考えられる事項として、以下の項目が挙げられる。
・利用者のニーズを迅速かつ的確に把握するための総合相談窓口(一元的相談窓口)の充実
・サービスの提供を迅速に開始するための要介護認定の効率化と居宅介護支援者(ケアマネジャー)との情報連携
・総合的サービスを提供するためのケアマネジメント機能の重視
・介護サービスの方向性と質を保つためのガイドと審査
・ガイドと審査を円滑に進めるための情報の一元管理と連携、対応状況の確認
・公平なサービスの提供を行うために、正確なサービス量の把握とサービス提供環境の整備
 在宅介護サービスの提供を支援する体制を整備するに当たっては、地方公共団体が、その福祉サービスの方向性と方針に従って、サービスの提供を担う各サービス提供事業者に対する影響力を直接行使できる体制が望ましい。提供事業者に対する影響力を直接行使できる体制が望ましい。
 しかし、地方公共団体の関与が強すぎると、民間活力の活用が阻害される危険がある。また、ケアマネジメントのすべてまで民間に任せると、地方公共団体の施策及びボランティアや地域組織の活動が、各サービス提供事業者によるサービスと断絶する恐れがある。そのため、地方公共団体と在宅介護サービスの提供にかかわる機関との間での役割や担当範囲等を明確にし、その上で連携を図る手段を検討する必要がある。
 新たな在宅介護サービスを効果的に機能させるには、利用者(要介護者及び介護者)のニーズを迅速かつ的確に把握し、そのニーズを十分に満足させる最適なサービスの組合せを、利用者の状態や状況の変化に即応させ、一体的・総合的に提供することが求められる。
 これらを十分に満足する体制の前提として、次の事項が挙げられる。


表3-1在宅介護サービスの提供にかかわる前提

 

 

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