日本財団 図書館


 本調査では、マネジメントサイクルにおける情報システムの事後評価を中心に検討を行うとともに、評価の結果、導き出される効率化方策として、昨今注目を集めているシン・クライアントとアウトソーシングに関しても検討を試みた。
 情報システムの評価に関しては、TCO等の最近の動向を加味して経済性評価を中心に検討を行い、評価方法の一つとして有効性がうかがえた。ただし、経済性評価だけでは、コスト削減的な側面が強調される可能性があることから、定性的な効果や問題点等を踏まえ総合的に評価することが不可欠である。
 シン・クライアントとアウトソーシングに関しては、地方公共団体において運用管理の効率化方策として有効性がうかがえたものの、すべての地方公共団体において一概に有効であると言えないであろう。シン・クライアントは、地方公共団体における導入事例は見られないものの、学校や先進企業における導入事例や、その特性から特定の業務や用途においては効果が期待できると考えられ、また、導入時においては既存の情報システムとの親和性等に留意する必要がある。また、アウトソーシングに関しては、現状の外注的アウトソーシングから、組織全体としての視点や情報化のマネジメントサイクルに基づいた戦略的アウトソーシングヘのシフトが望まれ、そのために地方公共団体においてはコア・コンビタンス等の検討が求められる。
 このように効率化方策は導入すれば必ず効果があるというものではなく、各地方公共団体が適切な効率化方策を選定し、より効果的な導入を行うためには情報システムの評価を行うことが非常に重要であり、今後、マネジメントサイクルに基づき定期的な評価に取り組むことで、ノウハウを蓄積し、評価能力を高めることが望まれる。情報システムの運用管理の効率化は、まず、情報システムの評価に取り組むことから始まる。
 また、島田達巳『地方自治体における情報化の研究』(1999年)にもあるように、情報システムの評価は行政評価のサブシステムであり、業務改革や行政評価と同時に並行して行われることが望ましい。つまり、情報システムが本来、業務の効率化、業務改革等を目的として導入されていることを考慮すると、情報システムの運用管理の効率化への取り組みは、行政改革の一環として位置付けることができる。「行政改革→業務改革→情報システムの運用管理の効率化」というアプローチも想定されるし、逆に「情報システムの運用管理の効率化→業務改革→行政改革」といった、運用管理の効率化の積み重ねから、行政改革に寄与することも考えられる。したがって、情報システムの運用管理の効率化に取り組む地方公共団体においては前提として行政改革への取り組むことが望まれ、行政評価の一つとして情報システムの評価を位置付け、情報化のマネジメントサイクルと行政改革の整合性を図ることが必要であろう。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION