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(2) 社会動向を踏まえた評価

 情報システムの評価を行う場合、社会的な潮流を考慮することが重要である。昨今の高度情報化の進展に伴い地方公共団体における情報化の重要度は高まっていることから、経済性評価の実施により一概にコスト削減されるとは限らない。評価により運用管理の効率化が図られた情報システムに関してはコスト削減が実現するかも知れないが、住民へのサービス向上等のため新たな情報システムの整備が必要になった場合、全体としてのコストが増大することは十分想定される。
 例えば、インターネットによる住民への情報提供システムを評価する場合、インターネットに接続している住民が少なければ、その効果は小さいことになる。しかし、効果が小さいから情報提供に要する労力や情報システムのコストを削減するという判断が適当であるとは限らない。もし社会的な潮流として住民によるインターネット利用の増加が今後期待できる場合は、将来的な高度なサービス提供のための先行投資的な意味合いを踏まえて評価を行う必要がある。

(3) 経済性以外の指標による定量的評価と評価サイクル

 経済性評価において地方公共団体のユーザーに対して行ったアンケート調査では、経済的に評価可能な項目以外にも定性的な効果、問題点等についても調査を行っている。効果と問題点に関しては図2-8から図2-13に示しており。5段階に分けて度合を調査することである程度定量的な把握が可能である。調査結果では、三つの地方公共団体において共通して「機器の台数」、「マニュアルの整備状況、分かり易さ」が問題点として挙げられており、今後、地方公共団体では、端末増強や、マニュアルの分かり易さを基準の一つとした端末調達等の実施が望まれる。
 また、効果や問題点を度合に基づき点数化することで、図2-5で示した評価サイクルにおける目標設定への活用も可能である。地方公共団体では、事前評価で設定した効果の点数向上目標、問題点の点数削減目標に対しての達成度を数値化することで、情報化の取り組み、情報システムの改善の程度等を評価することができる。表2-19に示すのはアンケート調査から抽出した各地方公共団体における情報システムの満足度である。地方公共団体では、これらの満足度をどの程度向上させるか、という観点から目標設定(事前評価)を行うことも可能である。
 このように、経済性以外の評価においても、事前評価から事後評価、事後評価から事前評価、といった評価サイクルを構築し、継続的な評価を実施することが望まれる。また、今回の調査は情報システムを構築した後の運用管理の効率化に焦点を当てているが、それ以前の企画・設計や構築の段階においても、より適切な情報システムを構築できるよう随時評価を行うことが必要である。

表2−19 情報システムの満足度評価

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