4−3 情報システムの総合的な評価
経済性評価は情報システムの運用管理の効率化方策を検討する上で有効な指標の一つであると考えられるが、情報システムは経済性だけで評価されるものではなく、多様な観点から総合的に評価することが不可欠である。
以下に情報システムの総合的な評価を行う上で検討すべき経済性以外の観点について整理する。
(1) 情報システムの効果の評価
本調査はコストを中心に経済性評価を行ったが、これは情報システムの問題点から効率化方策を検討するアプローチであり、一方で、情報システムから得られる効果を評価し、効果の拡大方策等について検討することも不可欠である。情報システムの効果は多岐に渡り、経済的に評価可能な経済的効果もあるが、経済的に評価が困難である非経済的効果も大きな割合を占めている。したがって、情報システムから得られる効果を評価する場合は、経済的な面だけでなく、定性的な部分(非経済的効果)も踏まえて評価することが望ましい。
定性的な効果としては「組織の活性化」、「情報の共有化」等があるが、図2-8、図2-10、図2-12に示したように達成の度合いをユーザー等から抽出することで、ある程度定量的な評価も可能である。また、効果を評価するためには、情報システムの導入目的や期待効果を事前に明確にしすることが重要であり、導入目的や期待効果の優先順位に応じて、実際の効果も重み付けして評価する必要がある。
また、効果と問題点(コスト)にはトレードオフの関係がある場合も少なくないので、このトレードオフに留意し情報システムを評価することが望ましい。
例えば「外部との連携」を目的として情報システムを導入した場合、外部からの情報の容易な取得、外部との情報の共有化、情報の再入力回避等の効果が創出される反面、情報の外部の漏洩やセキュリティ対策コストの増大等の問題点も発生する。この場合、セキュリティ対策コストは定量化が容易である反面、連携による効果には定量化が困難な部分も多く、問題点が大きく評価される可能性がある。しかし、実際には、このような問題点よりも、外部との連携による効果の方が大きい場合もあり、高いセキュリティ対策コストを投じても情報システムの外部との連携を強化することが望ましいこともあり得る。
防災等のセキュリティ対策に関しては、実際に災害が起こらないと効果の評価が困難なものもあり、そのような特性にも十分に配慮する必要がある。
前ページ 目次へ 次ページ