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2−3 地方公共団体への調査手法

 本調査では、実際に経済性評価を行うため、三つの地方公共団体に対してヒアリング調査とアンケート調査を実施し、評価に必要な情報を抽出した。

 (1) 経済性評価の手法
 
 情報システムの評価として単独評価と比較評価の二つが想定され、本調査では双方を用いて検討を行うこととする。単独評価は、情報システムの経済性を単独で評価するものであり、自己組織内で完結するため評価を実施し易いというメリットがある。単独評価では、情報システムのコストの内訳を把握し、目標設定に結びつけることも可能であるが、反面、コストの内訳等の相対的な評価が困難である。
 一方、比較評価は導き出した情報システムの経済性(コスト)を別の情報システムの経済性と比較するものであり、相対的な評価が可能である。比較対象としては、ほかの地方公共団体の同様の情報システムが考えられるが、このほか、同じ情報システムの1年前のコスト等、時系列的な比較評価も有効である。
 比較評価は単独評価と異なりコストのそれぞれの項目別に比較が可能であることから、情報システムの問題点や効率化の可能性を把握することが期待できる。これは、昨今、注目を集めているベンチマーキング(ほかと比較して最も良い事例に学び改善する)という経営手法に類似した考え方であり、比較評価の結果、ベストプラクティス(最も良い事例)を基に効率化のための改善を行う展開も想定される。

 (2) ヒアリング・アンケート調査の概要

 本調査では、情報化の動向、方向性を勘案して、庁内LANを構築している地方公共団体の一つのネットワーク・システムを対象に調査を行った。同じ地方公共団体内において稼働しているスタンドアロンの情報システムや、ネットワークの系統が異なる情報システムに関しては調査対象外とした。また、調査対象としたネットワーク・システム内のサブ・システムに関しては区別せず一つの情報システムとしてまとめて評価する。
 比較評価において可能な限り公平性を確保するため、人口規模や立地等の条件が同様と考えられる地方公共団体に対して調査を行った。
 ヒアリング調査は地方公共団体の情報システム部門を対象として、「システム構築費」、「運用管理費」、「情報システム部門人件費」等に関する情報を抽出することを目的に行った。アンケート調査はユーザーを対象に1団体当たり30のアンケート調査票を配布し、「ユーザー部門の人件費」等の情報を抽出することを目的として行った。

 (3) ヒアリング・アンケート調査の項目

 モデルによる経済性の試算で整理した必要な設定事項を基に、以下に示すようなヒアリング項目、アンケート項目を設定した。なお、評価に必要な地方公共団体職員の人件費に関しては、個々に把握することが困難であるため、モデル同様、地方公共団体全体の平均給与を用いることとした。
 なお、経済性の評価に必要な情報だけでなく、情報システムの定性的な効果や問題点等に関しても抽出し、定性的評価の定量化に関する検討に役立てる。

 

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