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 こうした経験を積むことで、蓄積された情報の「財」としての価値に気付き、インターネットを通じた、各種統計情報のデータ提供や例規集全文、各種申請書類の提供など利用する側の視点に立った行政サービスが実現してきています。
 また、「行政が知らせたいことだけ載せており、市民が知りたい情報はほとんど見当たらない」という市民からの指摘を受けがちな行政のWebページですが、全バス停留所の時刻表を掲載することから始まった交通局では、インターネット上で公開されたり直接に寄せられる市民の声と、その声に真摯に応えていくことを繰り返すことで充実した情報内容を持ったWebページに成長しています。市民のニーズや要望の市政への反映ということを考えるうえで貴重な経験でした。
 市民の求めに応じた情報の公開に加えて、アカウンタビリティの姿勢を明確にし、行政自身による情報公開を積極的に展開する公開性を持つことは、それらが見られ、聞かれ、かつ評価されることを意味し、そのことが行政の公共性を高め、かつ各局・課の情報共有や組織活性化につながるものです。
 このように、有効に機能しはじめているイントラネットですが、整備を推進していくうえで留意しなければならない問題点がいくつかあります。
 イントラネットの問題点というと真っ先にセキュリティ対策に関心がいくものです。外部からの不正侵入を防いだり、内部利用者(職員)のセキュリティ意識やモラルの向上などは当然に取り組まなければならない課題です。
 しかしながら、イントラネットというインフラの構築とパソコンの1人1台配備を進めるうえで、もっと重要な問題点として情報化の目的喪失という点があります。
 京都市における高度情報化の当面の目標は市民満足を目指した行政サービスの高度化にあります。しかしながら、新しい情報システムに触れることが情報化であると錯覚し、情報技術そのものにのめり込んでしまう、あるいは最初は目的意識を持っていても、道具を使っているうちに道具を愛でることが目的になってしまう職員が職階を問わず出現します。
 イントラネットの環境は、「個人のものでなく役所のものであり、仕事を高度化するための道具である」ことを職員に強く印象付けるために、配備するパソコンの匡体に市章を入れたり、起動ロゴを市章にしています。また、好みのソフトをインストールしたり、趣味の延長線上で自分専用のパソコン環境を築く等、パソコン操作に夢中になって統制のとれない行動に走ってしまわせないため、配備するパソコンからは日常の業務に不要な機能は徹底して省いています。また職員が作成する文書等は共用のサーバに保存することとし、必要以上のハードディスク領域を用意していません。
 パソコンやネットワークは仕事のために存在する、ということを徹底することが職員のセキュリティ意識の向上やリテラシーの向上の近道です。

 

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