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 このような低周波性の雑音(ランブル)を生じないような血圧の測定状況では,正しく血圧をとらえることはできない。
 聴診間隙は立位の血圧測定でしばしば遭遇し,これは前腕を下垂している場合に生じやすいことから,前腕をうっ血させるような条件が聴診間隙を起こしやすくするものと思われる。次いでカフ圧を下げていくと雑音は消失し,これに対して叩打音はより強くなる。これが第3相である。次いで叩打音はくすんだように小さくなるところが第4相で,その後引き続き音は消失する(第5相)。
 そこで,実際にこれらの音を記録してみると,音が聴こえ始める(S1),雑音が入ってくる(S2),叩打音が強くなる(S3),叩打音が急に弱くなってくすんだ音になる(S4),そして音が完全に消失する(S5)が区別される。これら各相における音の周波数を分析してみると,S2で80〜120Hzの雑音が加わり,S3ではこの雑音がなくなり,S4では40〜80Hzの音がさらに消失していることがわかる。
 このようにして,K音で測った血圧と動脈内圧を比較すると,両者の間に非常によい相関があることが知られており,したがって,この方法がもっとも適切な方法として広く用いられているが,動脈内圧と全く一致するというわけではなく,最高血圧は通常,動脈内圧よりも3〜5?Hgぐらい低く,そして動脈内圧の最低内圧はK音の4点と5点の中間にあるといわれている。K音の4点と5点については,4点のほうが安定していて種々の条件によってあまり変動しない。たとえば,運動をしたあと,甲状腺機能亢進症,貧血,あるいは心拍出量や心拍数の多い若い人の高血圧などでは,S5が0?Hgまで続くことがあって,最低血圧を定めることがむずかしい場合がある。このように,4点と5点とに非常に大きな差がある時,たとえば10?Hg以上差があるときには4点のほうを最低血圧にとるほうがよい。いずれにしても,間接法では正確な値が得られないわけで,4点と5点が近い場合には,いずれをとっても大差ないが,通常は,両方の値を併記することになっている。

 

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