D聴診法
聴診法による血圧測定では,コロトコフ音(K音)のとらえ方がもっとも重要である(図53)。カフ圧を上げていって,動脈から発生する音が完全に消失する少し上の圧からカフ圧を下げていくと,音が聴こえ始める。
この音は叩打音と呼ばれ,これが第1相で,最大あるいは収縮期圧に当たる。音の聴こえ始めに雑音が入ると聴き分けにくくなるので,聴診器のチェストピースはカフに触れないようにしておくほうがよい。また,雑音と叩打音の区別には,規則的に続く二つ以上の音を叩打音とする。K音は,その後カフ圧が下がっていくと次第に強くなり,かつ,低振動性の雑音を生じてくる。これはランブルと呼ばれ,第2相の特徴である。この第2相は,測定の条件や方法が適当でないと,叩打音や雑音がまったく欠如し,いわゆる聴診間隙となって収縮期圧のとらえ方を誤らせることがある。
図53 K音の1相から5相と聴診間隙の関係