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D 行動と血圧

 ひとは,それぞれの行動にさいして異なった血圧の反応を示す。すでに述べたように,24時間の血圧や心拍数の変化を日常生活における行動との対比で調べることができるが,これでみる限り,血圧には階層構造が存在し,日常生活の中で比較的安定していて,もっとも変わりにくい睡眠や安静の状態から,日常ルーチンに行っている労作や運動では,その活動状態の程度に応じて心血管反応を変化させる。もっとも変わりやすいのが,情動や情緒の変化を伴う行動である。階層構造の上位にいくに従って,血圧反応は大きくなり,また変動も著しい。これが高血圧患者になるとさらに血圧は高く,変動も大きくなる。
 調圧機能に変調をきたすと,睡眠中でも大きな動揺を示すようになる。逆説睡眠では,眠っていても,特徴的な眼球の動きや,夢をみたりする特別な睡眠相で,調圧機能が正常であれば血圧や心拍の変化はあまり目立たないが,調圧機能が低下すると著しい血圧の動揺を示すようになる。覚醒時では,電話,討論,演説,歌舞など情緒が不安定で高揚しているときの血圧上昇が著しく,このような行動にさいして,心筋梗塞や脳血管障害の発症をみることはよく知られている。
 血圧の動揺性はひとによって異なり,正常血圧や異常血圧のものより,境界型高血圧のもののほうが動揺が大きいといわれている。したがって,病院へきて血圧が上がるひとと,そうでないひとがいるが,動揺するひとというのは,やはり不安が強く,情緒も安定していない場合が多い。これらは白衣性高血圧と呼ばれ,1回の血圧測定値でそのひとの血圧状態を判断することは好ましくない。

 

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