図36,図37で,薬物注入前,そして調圧機序と関連のない部位に薬を入れた場合には,血圧はほとんど影響されないが,調圧反射に関連する部位に薬を入れると,このように血圧の調節が悪くなるということから,延髄の孤束路核は血圧を狭い範囲に調節しているもっとも重要な部位と考えられる。
C 高血圧患者の調圧機能
ひとの高血圧では調圧機能が実際にどのようになっているのであろうか。臨床では,患者の調圧機能を検査するために,しばしば昇圧物質が用いられる。薬物の静脈内の注入によって急激に血圧上昇が生じ,それに伴う徐脈反応によって反射の機能を検査する。すなわち,薬物の注入によって生じる血圧の上昇と心電図上心拍数を表現するRR間隔の関係は一次式で示される直線関係にあり,この直線の勾配係数を調圧反射のスロープと呼び,調圧反射の機能を表すものとする。簡単にいうと,このスロープが急峻なほど調圧反射はいい状態に保たれており,このスロープが緩やかになるほど機能が悪くなる(図38)。このようにして求めた調圧受容器のスロープ機能は,上述のように加齢によって,また血圧が高くなるほど低下する。最近では,降圧薬のあるものが,この調圧反射スロープを正常化することが臨床的に示されている。
図38 圧調圧反射スロープ(BRS)血圧の上昇によって徐脈を生じる反射機能を表している。この勾配が急峻なほど,反射機能はよい。