図32起立による血圧と心拍数の変化の機序
仰臥位から立ち上がるとき,ふつうのひとでは血圧があまり大きく変化しないが,ほとんどの場合,脈は速くなる。これが調圧反射の現れである。すなわち,起立によって静脈還流が減れば,心拍出量が低下し,血圧は下がる。従って,これを代償するために心拍数を増して心拍出量を保つとともに,細動脈の緊張を高めて血圧を維持しようとする。
この機序が十分に作動しないと,血圧が下がって,いわゆる起立性のめまいや失神を起こすことになる。実際には心拍数と血圧を臥位で測り,ついで立位にして3分後に心拍数と血圧を測って,それらの変動を比較する。
頻脈が生じないか,最低血圧の上昇がみられないときは,調圧機序に異常があると考えられる。
また,病気による長期の安静や宇宙飛行のように,長時間無重力状態にさらされるとき,この調圧反射に異常をきたし,起立性調節障害を生じることが知られている。