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息こらえをすると,胸腔内圧が上がり,そのために右心や肺への血液還流が減少するので,心臓から出る血液も減り,したがって血圧が下がる。息こらえのはじめに血圧が少し上がるのは,胸腔内の圧が上がって大動脈を圧迫するためといわれているが,そのあとは先に述べた機序で静脈血が心臓へ返ってこないので,血圧が下がる(図31)。こうして血圧が下がると,調圧反射によって脈がふえてくる。これらは頸動脈と大動脈からの調圧反射で起こり,息こらえをして下がった血圧を代償するわけであるが,このような血圧を上げる指令が出るにもかかわらず,血圧が上がってこないのは,静脈から心臓への血液還流が息こらえの間減っているためである。しかし,血圧が上がらないかわりに,心拍数が増し,また細動脈の緊張が高まってくる。
 このような反応は交感神経活動の亢進によって生じている。そこで息こらえを解くと,胸腔内圧が下がって,血液は一時に大量に心臓へ戻ってくる。そのときにはまだ交感神経緊張の亢進は続いていて,血管を収縮させているので,これに加えて心拍出量が増すと著しい血圧の上昇を生じ,これが再び反射性に徐脈をもたらす。このようにきわめて簡単な手技で調圧反射の機能を検査することができる。

 c)薬物負荷試験
 そのほか,薬を用いて血圧を上げたり,あるいは下げたりするときに,心拍数の変化をみることでこの調圧反射の状態を調べることができる。たとえば,アルミニトリットという血管を拡張する薬物を用いると,一時,急に血圧が低下し,反射性に頻脈を生じてくる。また,反対にノルエピネフリンやフェニレフリンの静脈内への注入で,急激な一過性の血圧上昇を起こすとき,同様に反射性に徐脈を生じる。これらの反応から,調圧系の機能を評価することができる。

 d)起立性試験
 起立性試験も簡単にできる方法で,患者への負担が少ない(図32)。

 

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