日本財団 図書館



 さらにもう一つは,血圧測定におけるコロトコフ音との関連で,Rey-nolds'numberが意味をもつ。図10のP1,P2という二つの異なった圧の関係で,高い圧から低い圧へ血液が流れるが,この圧の差[P1-P2]が大きくなるほど,流量(Q)は多くなる。すなわち,図7で蛇口が下のほうについているほど流量が大きいという関係に当たるが,この流量(△Q)と圧差(△P)の関係は,あるところまで直線的であるが,大きな血管でこのReynolds'numberが2000を超えると乱流が生じ,圧の差が大きくなるほどには血流量が増していかない。つまり,乱流を生じる分だけエネルギーがよけいに使われるので,相対的に流量が低下する。
 管の中の流体が流れやすい状態というのは,図11で流線のパターンが尖った状態であり,反対に粘度が高くて流れにくいときには丸味を帯びている。従って,中心を流れる軸流の速度,それからある距離を隔てたところのこの流れの速さの差(ズリ速度)が大きいほど,効率よく流れているということになり,ズリ速度が小さいほど流れにくい状態といえる。層流では,時間の経過によって流れの速度はまったく変わらないが,狭窄などによって乱流を生じるときには,時間の経過によって速度が多様に変化する。駆血帯で血管を圧迫してから,次第にそれを開いていくときに,このような血流の異常状態が生じ,このことによって音が発生すると考えられているが,実際には,乱流がもっているエネルギーだけでは音は発生せず,渦巻を伴った乱流によってはじめて血管壁が振動して音が出る。
 管の中の流体は,生体では血清と血球成分から成り,血流速度がそれほど速くないときには,これらが一様に分布しているが,血流速度が速くなると,血球は中心部分の軸流に集まって流れ,周辺部は血清だけになって,抵抗が減じ,流れやすくなる。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION