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対象はあらゆる終末期患者へ

 そういう背景を踏まえて,ホスピスはこれまではがんの人だけをみていたのですが,ほかの病気で終末期にある人たちもケアすべきではないかという議論が生まれています。とくにHIV,つまりエイズの人たちなどです。そのほか心臓病,呼吸器病などの慢性疾患もみてはどうかという動きです。それに加えて,英国ではがんサービスネットワークも見直されています。つまりがんケアの中核に緩和ケアが置かれるべきだということです。英国のすべての地方に緩和ケアサービスが提供されるべきであって,それには多方面の専門家がかかわるべきだといわれるようになりました。 そういうことから緩和ケアのモデル自体も変わってきました。これまでのように,終末期だけにかかわるのではなく,治療の段階から緩和医療を実践する,早期から継続的にかかわっていくということです。もちろん,亡くなったあとのグリーフケアもやります。
 したがって,独立ホスピスと総合病院,そして国の医療制度であるNHSという三者間の協力提携がますます深く進んでいます。英国で訓練・教育される医師は,すべからく緩和ケアの教育をされるとまで規定されるようになりました。
 教育はケアが3つのレベルにおいて提供されることを強調しています。医師,ナース,そしてどのヘルスプロフェッショナルも,緩和ケア的アプローチをするものとして教育されます。ケアに付随する重要な技術として麻酔,外科手術,症状緩和などが教えられます。それから専門的なサービスについて,患者とその家族を対象としたもの,さらに研究や教育にかかわる部分などです。
 ホスピスと緩和ケアの全英協議会がこういったガイドラインのマニュアルを出しております。
 以上が全体のバックグラウンドです。そこから生じている問題について,次にお話ししたいと思います。

 

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