ターミナルからパリアティブヘ
最初の問題は,自分は誰か,私は一体何なのかという問題です。先に触れたように,早い段階から患者さんとかかわる傾向になってきていますから,ターミナルという言葉自体が英国では用いられない傾向になってきました。
それと関連してターミナルやホスピスという言葉もあまり歓迎されない言葉になってきたのです。それに代わって好まれるのがパリアティブ(緩和)という言葉です。
一方では,早期に患者さんを緩和ケアに導入するという動きに対して批判も出てきています。早期から多くの人たちのケアに当たるので,本当に終末期にある人たちに対するケアが手薄になるのではないかという批判です。
すべての人たちに対して緩和ケアをするというアプローチヘの認識があり,専門的なケアをそれに重ね合わせていくというように考えていきますと,どういうバランスが必要なのかということが問題となります。たとえばすべての医師やナースに緩和ケアの教育を施すか,あるいはホスピスにかかわる人たちに数を限って教育をするかという問題です。
英国のある医学雑誌には,ホスピスはいいことづくめで真実性がない,そしてあまりに存在が小さいから社会にとって有用だとは言い切れない,といったような批判記事が発表されています。とくにホスピスががんを持つ人だけを対象にしているということに対する批判はかなり多く寄せられています。そこで,がんではない人たちのニーズをどう受け入れていくかということも考えていきたいと思います。
緩和ケアに携わる人たちへの専門教育を手厚くするという考え方を進めると,一般教育はどうなるのかという問題が出てきます。また,サービスとひとことに言っても,そのレベルはまちまちです。
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