「生」をいかに支えていくか
医療法人鴻仁会岡山中央病院
森井早智子
この研修には、緩和ケア病棟開設準備という他に、自分自身の勉強のために参加した。ここでは、施設のハード面を知ることや、緩和ケア病棟に必要なソフト面を2ヵ月間の研修を通して学びたいと考えた。
まず、ハード面では、そこに入院する患者がいかに気持ち良く快適に過ごせるかを考え、美しさと機能性を重視し工夫できるところは何かを見て参考にしたいと思った。
ソフト面では、ホスピスとは何かを自分なりに理解した上で知りたい次の項目、?緩和ケア病棟における看護婦の役割と必要な条件について、?他職種との連携、?チームアプローチの方法、?症状コントロールについて、?告知の問題、?患者・家族のケア、?遺族ケア、?入棟基準、?ボランティアの条件と教育について報告する。
ホスピスとは
ホスピスの語源はラテン語のhospitiumであり、客をあたたかく迎え、手厚くもてなす場所を意味している。
ホスピスの始まりは、11世紀の中頃、ヨーロッパでは聖地巡礼が盛んに行われていた時代に十字軍による聖地遠征が始まり、多くの巡礼者や兵士が過労、病気、けがなどのために動けなくなり、道端で死を迎えた。
修道院がこういった巡礼者や兵士を収容し、手厚い看病を行ったことがホスピスの始まりである。
緩和ケアの基本理念:(WHOでは)緩和ケアとは、治癒を目的とした治療に反応しなくなった患者に対する積極的で全人的なケアであり、痛み、その他の症状コントロール、心理面、社会面、霊的な面を最優先課題とする。
最終目的は、患者とその家族にとってできる限り良好なクオリティ・オブ・ライフを実現させることである。
緩和ケア病棟における看護婦の役割と必要な条件
緩和ケア病棟に入院してくる多くは、痛みや癌に伴う不快な症状など、様々な症状に苦しんでいる。これらの不快な症状で自分らしささえも失ってしまっていることが多い。緩和ケアナースは、痛みやその他の不快な症状のコントロールに関する知識と有効な方法を十分に修得し、患者の症状が軽快するよう医師や他のスタッフに協力しなければならない。
また、病気のために日常生活を一人でできなくなった患者に、ナースの専門的な知識と技術によって、できるだけ以前と同じような日常生活ができるように援助していく。
肉体的な苦痛の中で、自分の安楽のために積極的に働いてくれる人が常に側にいることは、患者にとって大きな支えであり、それは精神的な安定にもつながっていく。
末期癌患者へのケアは、患者だけでなく家族も対象になる。家族がおかれている心理状態を理解しながら話し合い、家族が危機的状況に陥らないように見守り、これから起こることについて情報を提供したり、家族が持つ様々な悩みを聞いたり、悲しみを素直に十分表現できるように援助する。その他では、チームの調整役や患者とその家族の代弁者としても重要な役割である。
他職種との連携とチームアプローチについて
人は身体的、精神的、社会的および霊的な領域を合わせ持つ統合的な存在であり、おのおのの領域を充足すべき基本的ニーズを持っている。
前ページ 目次へ 次ページ