自然な最期を迎えられるように
労働福祉事業団関西労災病院
酒井わか奈
今回の研修を受講して、研修前に問題と感じていたことに対し、私なりに今後どのように看護していくべきかを考えてみた。
当病棟は外科の慢性期病棟であり、がんによる再発により化学療法や放射線療法・緩和ケアを目的として入院されることが多い。真実を告知される患者は少なく、本人が病名告知を希望されても、家族が反対されれば告知しないことが多い。手術前には告知されても、再発に対しては告知されなかったりしている。以前、私は告知をしたほうが残された時間を有意義に使えるのではないかと考え、告知することに賛成であった。しかし、告知された患者が何か良くなる方法がないのかと質問されたり、強い不安により何もできなくなった患者を見ると、はたして告知も良いものなのだろうか迷ってきたところであった。
ある47歳の患者は右乳房癌で部分切除術を受け、その後左乳房肉腫のため乳房切除術を7年前に受けていた。今年に入り、CEA、CA19-9の上昇が見られ、前胸部に骨転移・皮膚転移があり、化学療法と疼痛コントロール目的で入院された。患者は病状に対し、全告知されていた。疼痛に関しては、NSAIDでコントロールでき、日常生活を施行する中で、疼痛は支障のない程度となった。しかし、患者は臥床していることが多かったため、患者に対し、抗癌剤は癌に対して、小さくする可能性はあるが、根治できるものではないので、これからも治療を続けながら、癌と共に生きていく必要があることを説明し、やりたいことは積極的に取り組むことを勧めた。しかし、患者はこんな状態ではやりたいことができないと訴えられた。動くと痛いのならば、痛み止めの変更を提案したが変更するほど痛くないといわれた。
私は患者にだけ、残された貴重な時間を有意義に過ごすように話をすすめてしまっていた。私は夫に対して、病状に対する認識や治療に対する期待を確認することをしていなかったし、患者の残された時間を大切に使えるように関わってほしいことを伝えられなかった。私はこのような厳しい話を、私自身がすすめてよいのか、また、話したときの夫の反応を考えると、私自身が患者の夫の衝撃を受けとめてあげられる自信がなかった。患者に対する情報はわかっていたが、家族に対する情報はあまり知らなかった。患者を支える夫はどのような人なのかよく知らなかった。これまで、家族に対する内面的な情報を得ることの必要性を認識できていなかった。患者の残された時間を家族が共に有意義に過ごすことで、グリーフワークにもなるだろうと考える。そのためには、厳しい話でもすすめていかなくてはならない。また、話をする時期をスタッフで検討することも必要だし、家族の内面的な情報も収集することも必要だ。そして、話した後の家族の状態が危機状態にならないように、学習した理論をもとに援助していく必要があると考える。その前に家族の発達段階もよく考えておく必要があるし、看護婦は家族も看護するのだということや最悪をつくすことを伝えておく必要があった。
また、当外科では患者・家族に告知に対するアンケートをとっており、患者が告知を希望しているのならば、家族に告知の利点を話すこと、医療スタッフも精神的フォローすることを説明し、患者が告知を希望しているならば、告知を勧めていった方が良いのではないかと考える。病状の告知を受けることは、倫理的に考えてもその人の権利でもあると考える。研修の中で、遺書を書く機会があった。とてもつらかった。しかし、遺書を書いていくうちに自分が残された時間でやっておかないといけないこと、やり残してしまうことが明確になった。そう考えると、告知はやはり患者が希望されれば、
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