セデーションの問題を考える際、倫理的側面からの考察が重要だと思います。この問題においても患者の意思を確認し尊重することがとても重要です。実習施設の医師や婦長さん、清水哲郎先生も基本的に『思いを表出できない状況にするということは、人間として生きているということにならない』というスタンスのようです。
人間として尊厳を保つということを、清水先生は、以下のように提案されています。
?耐えられない不快感に意識のある間中直面しており、回復の見込みもない。
?他者との交流ができない状態(無意識状態も含む)に長期にわたってある、ないし今後長期にわたってあると予想され、かつ回復の見込みもない。
このことからセデーションに対してはかなり慎重に検討を重ねた上で、どのような方法を試みても緩和することができない耐え難い苦痛がある場合は、最終的にセデーションが適応になると思います。しかし、セデーションが長期にならないように、チームでその時期に関しても慎重に検討すべきだと思います。
(2)症状コントロール
『症状とはその人が感じる主観的なもの』ということを前提に、訴えをありのままに受け入れる姿勢、共感する態度、訴えている言葉の意味をとらえることが必要と思われます。患者が訴えを表出しやすい環境(看護婦との関係も含めて)を整えることもとても大きいと思われます。症状マネジメント及び、さまざまな症状コントロールの講義の中で、症状コントロールする上で看護婦の役割が大きく、主導権をもって関わっていく姿勢とそのための正確な知識・判断力・柔軟な態度が必要ということを、どの講師の方も同様に強調しておられました。
疼痛コントロールにおいて、痛みのアセスメントをきちんと行うことが大切です(いつから、どこが、どんなふうに、どれくらい)。ペイソスケールを用いて治療の効果について評価を行います。その際患者や家族と共に協力して行っていくことが大切です。
NSAIDs(特にボルタレン)は、臓器への影響が大きいため長期使用は避けた方がいい。モルヒネの使用方法、レスキューの計算法、翌日の基本投与量の計算方法、モルヒネの効果のない痛みについての対応など、再確認しながら知識が深まり勉強になりました。
実際の疼痛コントロールに関して実習病院では、講義で習ったようにWHOのがん疼痛治療法に基づいて行われていました。そこで看護婦は、入院時の痛みについての質問用紙を利用した情報収集がきちんとなされていました。その後はペインフローシートにて各勤務できちんとアセスメントされていました。ただ症状はあくまでも主観的なものなので、客観的に理解するのが難しいケースもありました。痛みは身体的なものだけでないので、いろいろな要素が影響しあっているため複雑なのだろう。“人は痛みに対して生理学的・行動学的適応が起こる”といわれています。痛みが長期化すれば血圧や脈拍にも現れず、表情や行動にも現れにくくなるそうなので、患者の言動に注意していく必要があります。
(3)コミュニケーション論
緩和ケアにおいてコミュニケーションはとても重要な位置を占めます。基本は、まず自分自身が自己受容し、よりよい精神状態であること。
傾聴し共感する態度。言葉の裏に意味されているものは何か考えてみる。また隠れている感情を感じ取る技術を身につける。患者が何を求めているのかわかろうと努力する。感情の55〜70%は、非言語的コミュニケーションを通じて伝達されると言われている。構えず、ゆったりして、穏やかで、自然な態度で接する。声のトーン、声の調子、表情、物腰などに注意して接する。
実習施設においても目線を合わせ、穏やかにゆったりした態度で接しておられ、よりよいコミュニケーションが行われていました。
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