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患者の人生観・価値観を尊重する

イエズスの聖心病院
野村かおる

 

はじめに

 私が勤務しております施設では、症状コントロールなどさまざまな場面で看護婦の判断力がかなり要求されます。やりがいを感じる一方で、自分自身の知識不足を感じている状況では責任が重く不安でしかありませんでした。それは症状コントロールだけでなく、患者さんとの関わり、コミュニケーションの取り方など、理論的根拠が皆無の状況の自分自身が情けなくて全てにおいて自信がない状態でした。これまでの一年間を振り返り、緩和ケアナースとして必要で正確な知識、技術、態度について総合的に学びたいと思い参加しました。

 

研修から学んだこと

(1)倫理的側面について

 生命倫理について学ぶということは今回の私の研修目的の一つでした。奥が深くかなり難しい学問で、極上辺のみを少々理解した程度ではありますが、医療現場において倫理的問題に直面することは少なくありませんので、倫理学を学ぶことはとても大切なことだと思われます。
 倫理とは一般にチェック機能で、医療においては方向づけのルールでもあります。倫理原則とは、患者の益となることをする。患者の害となることはしない。患者の意思を尊重することです。
 困った問題、つまりどちらを選択しても好ましくない結果になるが、そのどちらかを選択しなければならないようなとき、例えば治療を選択する場合「苦しくても長い余生か、短くてもより快適な余生か」という、両立しない複数の価値の間で、どれを選択するかが問題となります。倫理原則に基づいてインフォームド・コンセントを共同で進め、患者が自己決定できるように支援し、患者の自己決定を尊重する姿勢を示すことが大切です。
その際気をつけることとして医療者側は、患者が決定するのだからと主体的に考えることを放棄してはなりません。患者の選択が、医療者が吟味した一般的に妥当と思われる選択肢に反する場合は、その選択に至った理由を尋ね、納得でき同意できる理由があるかどうか、理解が不十分なためにその選択に至ったのではないか、と吟味しなければなりません。そのためにも、これが一般的に考えて最善の選択肢だという考えを持っておく必要があります。
 緩和ケアのみならず看護する上で「患者の意思を尊重するということ」、このことは基本的考えであると思います。患者の人生であること、だからその人の人生観・価値観を尊重するということです。実習施設では、患者の意思を尊重するということを最期まで尊重されていました。しかし、患者の意識レベルが最期まで鮮明に保たれることは難しい。そのため日頃からコミュニケーションをもち、患者の思考パターンを知っておくように努めておられました。こうすることにより、家族と共に最期まで患者のその人らしさを支えることができるのではないかと思いました。

 

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