このホスピス病棟では、医療機器で患者さんを監視したり管理したりするのではなく、自分の目と手で観察者は観て、患者さんはご家族に見守られながら看取られていく、という考えの基に、不必要な医療機器や機械的な測定を排除し、看護婦は、忙しい夜勤でも自分の目で観るということが徹底されていた。一般病棟でしか知らない私にとってはショックであり、これから緩和ケア病棟を開設するにあたり、看護のあり方について示唆を受けたような気がした。
さらに、呻吟が強く辛そうな状態が続き、セデーションが考えられていたが、ご家族が来られるまで看護婦は付き添い、ご家族が来られてから、本人の意思を確認して、主治医の指示に従ってセデーションをされた。このことを見て、講義の中で、セデーションのテーマで、どの時期にどのように導入するか、あるいは、セデーションそのものについて論議されたことなどが、実践の部分に結びついた感じであった。この場合、セデーションをご家族が来られるまで待たせたことによって、患者さんにとっては辛い時間を長引かせてしまったと担当看護婦から教えられ、実際のセデーションの難しさを実感した。
しかし、いかに、患者さんの意思を尊重し、看護婦の看護の視点による価値観と状況判断の確実性が要求されるかを認識した。
次に、私の施設の看護方式は、固定チームナーシングであるため、ホスピス病棟におけるプライマリーナーシングに関心があった。ここでは、2〜3人の患者さんをプライマリーとして受け持ち、日勤勤務では、プライマリーの患者さんを含めて、3〜4人の患者さんを受け持ち、プライマリー以外はアソシエートナースとしての役割を担ってい々プライマリーナースとしての責任感は強く、その役割を第一に遂行されていることから、少々プライマリー色が強いのではないかと感じたが、プライマリーナーシングは、看護婦が責任を持って患者さんと全入院期間を通して直接に関係を確立して看護を進めていくことから、より質の高い看護が提供されると認識する。アソシエートナースとの情報の共有化の問題やチームアプローチの観点から、私の施設での看護方式を考える課題を得た。
患者さんにとって、入院生活は規制が多く、私達の看護ケアにおいても「患者さん中心の看護」と言われながら、看護婦は、効率的に行動したり、「…であらねばならない」という意識にとらわれて、本当に、患者さんの意思を尊重してきたか、あらためて考えることができ々哲学の清水哲郎先生が、患者さんのQOLについて「患者さんの人生の可能性の幅、選択の幅がどれほどあるか、どれほど自由であるか」と言われている意味をあらためて認識した思いである。
聖隷三方原病院ホスピス病棟での実習では、残念ながら、ボランティアに関する実習を行うことができなかったが、毎日が新鮮な緊張感で、一般病棟では気づかなかったケアを学び、所長である千原先生からホスピスにおける貴重なお話を伺え、杉山婦長はじめスタッフの方々からホスピスにおける看護実践を教えていただき、有意義な実習を行うことができた。感謝するとともに、私の施設における緩和ケア病棟の看護実践に生かしていきたい思いでいっぱいである。
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