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緩和ケア病棟の開設を目前にして

医療法人松濤会安岡病院
森國秀美

 

はじめに

 私どもの施設は、介護力強化病院として、高齢の患者さんやご家族のQOLを高めることを目的とした看護を行ってきている。平成8年4月からは、緩和ケアを取り入れ、がん終末期の患者さんも受け入れるようになり、平成11年には、緩和ケア病棟が開設することとなっている。
 現在、ハード面、ソフト面で準備を進めている中、緩和ケアナース養成研修に参加させていただくことになり、私は、緩和ケアにおける?看護管理、?教育のあり方、?症状コントロールの3つの課題を持って臨んだ。私は、外科病棟で、かつて、がん患者さんの看護に携わったが、緩和ケア病棟での経験はない。今回この研修に参加させていただき、講義では多くの知識の学びを得、実習においては緩和ケアにおける看護の実際を経験し、また、参加21施設の仲間とは、深い絆を結ぶことができ、貴重な2ヵ月間を送ることができたので、報告する。

 

研修に臨んでの課題

(1)緩和ケア病棟における看護管理
 緩和ケア病棟のあり方、看護の体制、ケアの方法、スタッフのサポート、ボランティアの受け入れなど、どのように緩和ケア病棟において看護管理を行っていけば良いのかを学ぶ。

(2)緩和ケア病棟における教育のあり方
 緩和ケアに携わる看護職の教育はどのようにすればよいのか、患者さんやご家族のQOLを支援する者として何が必要なのかなど、教育のあり方を学ぶ。

(3)緩和ケアにおける症状コントロール
 痛み及び痛み以外の症状コントロールに対しての専門的な知識を学ぶ。

 

研修の実際

 講義の内容は、?生命倫理・看護倫理、?総論−緩和医療、緩和ケア、?各論−症状コントロール、?腫瘍学、?家族援助論、?コミュニケーション論、?チームアプローチ、?精神腫瘍学、?危機理論、?諸制度、の10のカテゴリーで行われた。それぞれの講義の中で多くの学びがあり、私自身があらためて認識したこと、今後、施設に帰って伝えたいと思っていることをまとめる。
 生命倫理においては、緩和ケアにおける死の捉え方で「死を予測しているが、死を意図していない」と言われたことが心に残った。理解できないわけではないが、実際、臨床の場に立ったとき、そのように捉えることができるか分からない。自分自身の中に、構築していく部分である。
 現在、私の施設では、緩和ケアを目的に入院される患者さんよりも、多くの高齢患者さんが入院している。そして、その大半が、最後の迎え方を自分で決めることができず、ご家族の意向で、その人の迎え方があるように感じる。このように倫理的な観点から、考えていかなければならないことが、緩和ケアの中だけでなく、高齢者の中にも多く存在することを実感した。

 

 

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