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 実習病院では、家族とのコミュニケーション、特にターミナル期では十分な話し合いや説明が重要であるとしてケアを実践している。医師も看護婦もたびたび病室を訪問し、必要時は場所と時間を提供し、家族とのコミュニケーションに努めている。そして家族の思いを個人的な関心をもって聴くようにされていた。家族との面談の場に何回か同席させていただいたが、必ず、「今何が一番心配ですか、患者さんを見ていていかがですか」と尋ねていました。これは医療者が、家族に知らせたいこと、家族の知りたいことのずれをなくすること、家族の思いを聞くことである。
 また、あらかじめ情報を与えることにより、家族は苦悩や悲嘆するが、このことで現実の死別に対する心の準備が行われる。私の実習中も亡くなられた方の奥様に対して、この予期悲嘆への援助がしっかりとなされていたと感じられた事例があった。
 遺族のケアについても、毎年2回の遺族会、また、月1回の遺族会を始めることの相談もしておられた。このように患者、家族を一つの単位としてのケアが確立されていると思った。私の病院では、具体的に遺族会の検討などはまったくなされていないが、まずはスタッフの家族ケアに対する認識を高めてゆくことが必要であり、私の役割の大きさを痛感している。

 

おわりに

 2ヵ月の研修は、私にとって今まで頭の中で考えていたことが、講義、実習、他施設の人たちとの情報交換、施設見学などにより実践と結びついて考えられるようになり、とても有意義な研修であった。
 緩和ケア病棟では、看護婦がどのようにケアしているのか、チームアプローチはどのようになっているのか、症状コントロールの実際は、緩和ケア病棟に入院していらっしゃる患者さんの反応は等が少しずつ理解できるようになった。今後国立山陽病院の緩和ケア病棟として、どのような理念をもって、どのように運営していくか、今回の研修で学んだことを生かし、また病院の状況にあった方法で進めていきたいと思います。そして他の施設の人に相談したいことなどが起きた場合、この研修で築くことができたネットワークを大いに利用させていただきたいと思っている。
 最後に、受講生の担当をしていただいた小田式子先生、金子祐子先生、またお忙しい中実習を引き受けていただいた淀川キリスト教病院の田村恵子婦長さんはじめスタッフの方々に深く感謝いたします。

 

〈参考文献〉

1)季羽倭文子:症状マネジメントにおける看護婦の役割、ターミナルケア 7(Suppl):p10〜p17、1997-6
2)柏木哲夫監修:ターミナルケアマニュアル第3版、p229〜p235、最新医学社、1997

 

 

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