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研修で築いたネットワークを利用して

国立療養所山陽病院
末広洋子

 

はじめに

 平成10年10月1日に、私の勤務する国立療養所山陽病院に、院内独立型の緩和ケア病棟が25床で開棟予定である。私は緩和ケア病棟の婦長として、開棟までに?緩和ケア病棟の基本理念の理解と徹底、?病棟運営、管理に関する検討、?看護体制の検討、?スタッフ教育、?施設に関する検討、?ボランティアの導入についての検討の6項目をクリアしておくべき課題としてあげていた。
 今回、緩和ケアナース育成研修が計画されていることを知り、ぜひ参加したいと思い応募した。参加条件がホスピス、緩和ケア病棟で働いているか、もしくは準備中の病院の看護婦となっているので、私と同じ課題をもっている人、また実際に働いている人たちに出会え、緩和ケア実践の場でのいろいろな意見や示唆がいただけるのではないかということ、また緩和ケア病棟の見学ができ、それぞれの緩和ケア病棟のハード面、ソフト面について知ることができ、そのことが当院の緩和ケアを進めていく中で参考になるのではないかということ、研修に参加された人やその施設とのネットワークづくりができるということがとても魅力的であった。
 また、研修内容も緩和医療、家族援助、症状コントロール等基本的なことから学習でき、2週間の実習では、ホスピスケアの実際を通して、いろいろと学ぶことができた。
 研修を通して、私が学んだこと、及び今後自分の施設でどのように生かしていけるかについて述べてみたいと思います。

 

緩和ケア病棟の理念について

 講義では、国立がんセンター東病院の志真泰夫先生に「緩和医療」、丸口ミサエ先生に「緩和ケア」について話していただいた。緩和ケアとは、治癒を目的とした治療が無効なった進行がん、AIDSなとの難治疾患の患者に対して行われる積極的な全人的治療であり、このような難治疾患に苦しむ患者と家族ができるかぎり良好なQOLを実現できるように援助することである。
 緩和ケアの理念は、?生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れることとして、死にゆく過程にも敬意をはらう。?死を早めることにも遅らせることにも手をかさない。?痛みのコントロールと同時に痛み以外の苦しい諸症状のコントロールを行う。?心理面のケアや霊的な面のケアも行う。?死が訪れるまで、患者が積極的に生きていけるように支援する体制をとる。?患者が病気で苦しんでいる間も、患者と死別した後も、家族の苦難への対処を支援する体制をとる。とある。
 これまで頭の中では、理念を理解していたつもりであったが、淀川キリスト教病院で実習したことで、一つ一つのことが具体的に理解できた。また、より充実したケアを行うためには、チームアプローチが重要であることも理解できた。このことは実習についての項で具体的に述べたいと思う。

 

 

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