研修で学び得たこと
次に、これまでの講義や病院実習を通して学んだこと、今後どのように生かしていくかということを課題に沿って述べていきます。
課題?の終末期患者と家族のための緩和ケアの基礎については、導入として清水哲郎先生の生命倫理の講義や岡谷恵子先生の看護倫理の講義と、児玉哲郎先生の腫瘍学の講義や濱口恵子先生のチーム医療の実際の講義を関連させて、“なぜ今医療倫理がクロースアップされるのか”ということを私なりに整理できました。
臨床経験を重ねていく上で、目まぐるしい科学技術の発達により医療技術の変化と、マスメディアの発達や個性を尊重するという風潮により医師のパターナリズムを前提としたこれまでの医療を国民が疑問視していることが分かります。これらは臨床における訴訟内容に顕著に現れています。また、1994年に厚生省が提示した“がん克服新10カ年戦略”でかん予防に関する研究やがん患者のQOLに関する研究が加わったことは、超高齢化社会と国民の医療ニーズが医療から福祉へ、介護ニーズが施設から在宅へと変化してきている背景、成人病が生活習慣病と改名され、がんも追加されたことからも理解できます。
このような社会背景の変化から、患者と医療者が互いの思いや考えをオープンにして患者にとってベストな治療や看護を一緒に決定していく方向性が支持されていると考えます。しかし、私たちは患者主体の医療をと言いながらも、気づかないうちに医療者が主体となってしまっている現状があることも事実です。私たちはこのことを念頭に置き、絶えず医療の主体を確認しながら患者が病気と共に生きるために支援していく役割があることを学びました。そして、ジレンマに陥っている患者に人間として向き合うためにも、自分のアセーション能力を高めていきたいと思います。私はスタッフにこれからの医療の動向と、期待されている看護婦の役割を提示した上で、スタッフの弱みを強化できるような個別性のある教育をチームで展開できるように準備していきたいと思います。
まずは、“看護婦の規律”をスタッフに振り返ってもらい、医療倫理についてと倫理的ジレンマに陥ったときの対処について、根拠を明確にすることが自己決定を支え、かつ患者の自己決定をも支えることにつながるということを伝えようと思います。その後で、大学病院で緩和ケア病棟を開棟する理由を明確にして、チーム内で緩和ケア病棟の理念に対する認識を統一したいと思います。緩和ケア病棟は他の病棟に比べて、病棟内設備なとアメニティーが高くなるでしょう。緩和ケア病棟として認可されるためにもアメニティーの充実は外せない部分です。しかし、なぜアメニティーの充実が必要なのかについてもチーム内で確認しておく必要があると考えています。患者さんが最後まで生きているということを実感したいという思いを尊重するためのアメニティーであり、スタッフが合理的に仕事をするためのアメニティーではないということをきちんと説明できるようになってほしいのです。なぜなら、緩和ケア病棟の認可基準の項目で看護婦と患者さんの割合が1:1から1:1.5以上に短期間で変更されたからです。この基準は、病院の理念と緩和ケア病棟の経営方針によって看護度にまで影響してくると思います。緩和ケア病棟の在院日数を短期化して在宅療養をバックアップして、在宅療養が困難になってからの入院となると、当然看護度は高くなるでしょう
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