この学びを緩和ケアの質の向上へ
淀川キリスト教病院
常森栄子
はじめに
ホスピスで勤務するようになり、2年目を迎えた今、ホスピスナースとしてのより専門的な知識、技術の必要性と幅の広さ、そしてそれらに対する自分自身の未熟さを痛感しています。患者・家族との関わりの中で、ケアに対する問いかけは常であり、ホスピスナースとしての自分に自信の持てない日々が過ぎていたように思います。
具体的な問題点として挙げていたのは、
?家族ケアの考え方と実際について ?倫理的問題についての考え方について ?精神的、霊的ケアの実際について ?チームアプローチの取り方について、なとがありました。これらのほかにも多くの課題を抱えての研修参加でした。今までの自分自身のケアへの態度、認識を含めた振り返りとともに、緩和ケアの基礎を十分に身につけ、緩和ケアナースとして実践していけるよう学びを深めたいと思い、この研修へ臨みました。
次に講義と実習を合わせ、私なりに考察し、学んだことを順に述べてみたいと思います。
族ケアの考え方と実際について
日々のケアの家族援助の実践において、家族援助をどう捉えればよいのか、家族への関わりをどこまで行えばよいのか、家族との気持ちのずれにどう対処すればよいのか、家族の誰(どこ)にどのように働きかければよいのか、戸惑うことがたびたびありました。総論においては、受講生のそれぞれの家族援助に対する考えと、問題点を自由に出し合い、その上で家族の定義と機能を学び、理論的に知識として得ることができたと思います。
つい私たち看護婦は「何かしてあげなくては、何かをしなくては」と、必要以上に考え込んでしまいがちです。また、つい自分の理想の家族観、価値観で「こうあってほしいな」という我々の思いが先走ることも、時としてあるように思われます。講義でもお話しされたように、看護婦は家族の代わりにはなれません。当たり前なのですが、まずはこの事実をおさえておくことは基本であるように思いました。
また、とても大切だと感じることは、さまざまな家族像や、家族関係に対しての、自分自身の信念や価値観の自由で柔軟な捉え方ができるかどうかです。実践では、複雑で、困難な、家族との関わりが多くあります。十分に解決することはできなくても、対象の歴史や背景、人間関係を知り、それらのもとに今の状態(問題)があると理解できれば、その対象の人間理解へとつながり、関わり方も柔軟になれるように思います。
看護婦の役割として大切なのは、まず援助ニーズの見極めであり、それに沿っで情報を正確にわかりやすく提供し、ともに成長していこうとする姿勢にあるのではないかと思います。今後の実践では、限界を見極めなから、患者・家族の本来備わっているセルフケア能力を発揮できるような援助をしていければと思います。
倫理的問題についての考え方について
このことについて学ぶことは、私にとってはとても重要な課題としてありました。患者さんとの関わりにおいて、倫理面でのジレンマや疑問は、看護婦としてはもちろんですが、人間として問われる部分が強くあります。
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