患者の心身の苦痛と向き合って
医療法人愛和会愛和病院緩和ケア病棟
江島キン子
はじめに
この研修にあたり、私自身の問題点は“緩和ケア”という全体像の取り組みだと思います。延命から自然のギャップー“生と死” “告知”“家族”と、また一般病棟での死の不自然さと治療の矛盾など、緩和ケアは他の疾患の場合とは異なる困難な問題を多く抱えるが、がん患者の問題解決に必要な専門領域の中の大きなところであると思う。緩和ケアの知識、技術はガン患者の実践に不可欠と考え、今回の緩和ケア養成研修に参加し、“緩和ケア”を少しでも理解できればと思う。私の内に終末期医療の在り方も言葉の変わりが3つあったと思います。 「ターミナルケア」から「ホスピスケア」の次に「緩和ケア」と言葉が変わる。でも言葉の呼称は変わっても、終末期治療に関しては同じ目的と内容を意味していると思います。
WHOは緩和ケアを次のように定義しています。 「緩和ケアは病気の治癒を目指した治療がもはや有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである。痛みやその他の症状コントロール、精神的、社会的、その魂の問題への援助が、緩和ケアの主要な課題である。緩和ケアの目標は患者とその家族のためにできる限り可能な最高のクオリティ・オブ・ライフを達成することにある」
つまりはホスピスケアの内容を取り入れたガンの終末期治療の新しい在り方を“緩和ケア”という呼称で提案している。
研修で学んだこと
1)緩和医療
緩和医療の歴史的な原点は英国に始まり、ホスピス運動にある英国のホスピスは19−20世紀にかけて治療困難な結核やがん患者を収容する福祉的な施設として知られていた。1967年、ロンドン郊外にセントクリストファーホスピスが創設され、以降末期患者に対する新しい医療モデルとして注目されるようになった。ホスピスが終末期患者の新しい医療として注目された理由が3点ある。
?終末期患者に対する身体的、心理的、社会的、霊的な全人的理解を提唱したこと
?痛みをはじめとした患者の苦痛な症状に対して、適切な医学的管理を導入したこと
?医師、看護婦をはじめとした医療専門家にボランティアを含めた優れた医療チームを組織したこと
(1)緩和医療の理念は次の6点に集約される
?生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れることとして死に行く過程にも敬意を払う。
?死を早めることにも、死を遅らせることにも手を貸さない。
?痛みのコントロールと同時に、痛み以外の苦しい諸症状のコントロールを行う。
?心理面のケアや霊的な面のケアも行う。
?死が訪れるまで患者が積極的に生きていけるように支援する体制をとる。
?患者が病気で苦しんでいる間も、患者と死別した後も家族の苦難への対処を支援する体制をとる。
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