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受講生仲間との出会いは大きな収穫

健康保険総合川崎中央病院
宮園順子

 

はじめに

 今回、この研修を受けようと思った動機は2つある。1つめは自分の病院に院内病棟型の緩和ケア病棟が開設されるため緩和ケアの基礎を学び、緩和ケア病棟における看護を実践する能力を身につけたかったためである。
 2つめに、救命を主体とした医療現場の中で働いてきて、終末期にある患者の存在が尊重されない現状にさまざまな葛藤や困難を感じ、自分が直面している問題 課題を解決する糸口を見つけたかったためである。
 参加課題は、「?疼痛と諸症状のコントロール法について学ぶ?精神的ケアについて学ぶ?家族への援助について学ぶ」である。
 この2ヵ月間の研修を通し、いろいろな学びがあったのでここに報告する。

 

疼痛と諸症状のコントロールについての学び

 終末期の患者がその人らしく最期を迎えるためには、疼痛や諸症状の苦痛を取り除くことが先決であると考える。今回の講義の中では基本的な部分の振り返り、学びが多くあったので、そのことを述べてみたい。
 まず、症状コントロールの捉え方の視野の狭さに気づいた。苦痛症状を取るのは医療者の役割として大きな部分であるが、私たちはつい医療者だけでコントロール法を探り出そうとしてしまう傾向にあるということである。症状は個人的で主観的現象であり本人にしか体験できないものであり、症状を的確に捉えるためには患者が症状をうまく表現できるように関わることが重要である。そして、自分で表現できることは一つのセルフケアであるということも学んだ。これには、患者が自由に体験していること、思っていることを話してもらえるよう、私たちは関心を向けているという態度、耳を傾ける姿勢が必要である。また、患者が何気なく用いている症状緩和の方法(例えば・痛いところを手でさする、体位を工夫しているなど)も一つの方法として捉えることで、医療者だけが一方的にコントロールしているという考え方から、患者も治療に参加しているという考え方ができる。患者も症状コントロールに参加しているという気持ちが持てるように、一つ一つの方法を共に話し合っていくことも大切である。
 次に症状の定義についてであるが、「定義」は各個人できちんと捉えていれば、それでいいのではないかと今まで考えていた。しかし、症状の定義は個人で捉え方が違う場合もあることを研修中の講義で感じることかあった。研修課題の一つにグループで症状の定義をまとめる機会があり、皆で定義を明確に理解することで意見に共通性がでてくると分かった。臨床現場では症状についての意見交換をすることが多いので、まずは定義についてきちんと捉えてスタッフが同じ視点から症状マネジメントを考えていけるよう心がけていきたい。
 症状コントロールは、定義・機序・現れかた・管理方法・方略などの幅広い知識と判断力が要求され、タイムリーな情報も必要となる。患者の残された日々が短いということも常に頭におき、日常的に修正・評価していかなければならない。

 

 

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