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2)終末期患者、家族の心理の理解と関わり方

 患者、家族は様々な思いをもってホスピスに入院してくる。その代表的なものとして「いよいよここまできた」という思いをもたれてくるのではないかと思う。
 積極的治療を中止せねばならなかった現実から、見捨てられたのではないかという、先が見えない不安を抱いていることへの対応として、現在の病状の原因と成り立ち、治療内容とその必要性を分かりやすい言葉で説明する。このことにより治療の50%は成功したようなものとの話を志真泰夫先生の講義の中で聞き、納得できる点が多くあった。
 今後の状況が見えないということがなお一層不安や恐怖心を煽り、患者にとってはそのことが身体的苦痛の増強に結びつくことになったりする。その点は家族サイドにも言えることで、苦しむ患者を見ることで家族の不安も増すといった悪循環を招くことになる傾向は否めないと考える。また、この点を精神腫瘍学の立場から「がんが心に与える影響」 「心や行動ががんに与える影響」の両面から精神的反応と支援についての講義を内富庸介先生より受ける機会を得た。
 臨床においても不安からくる抑うつ、せん妄などは大きなテーマである。不安や抑うつ症状が持続してみられる場合には、「がんなのだから仕方がない。当然の反応だろう」と考えずに、患者の精神状態を深く配慮し、支えていかなければならないことなどを改めて考え、診断基準、薬物療法に対する系統だった知識、精神科へのコンサルテーションの指針などを理解する必要性を感じた。
 看護面においてもフィンクの危機モデルのケースを通して進行がん患者の心理的特徴と援助について田村恵子先生の講義を通じて学んだ。不安、せん妄、混乱などをより具体的に理解するために各テーマについてグループワークでレポート作成を行い、それぞれが取り組んだテーマをより深く学ぶとともに各テーマを発表共有することで短時間で多くの学びを得ることができた。
 家族に対する援助として、渡辺裕子先生の家族援助論を通して現在の「家」から「個」に変化し、家族の形態が変わりつつあり、家族としての機能か弱っているのに、家族に対する社会のニーズは上がってきているという現状の中、家族全体が援助の対象になっている点について学んだ。
 ?家族看護過程の構造?問題の明確化?計画立案?援助の焦点と方法?評価?修正の実際、を先生自身の具体的経験を通して知ることができた。
 患者、家族は互いに相関関係にあり、常に両者のサポートが必要である点は理解されているが、実際においては患者サイドが中心となり、家族面てはなかなかフォローされていない現実がある。しかしながら、患者に対するケアの質の向上を目指すとき、家族のケアを見逃すことはできないという点がこの講義を通して確認できた。この点を自分の施設に持ち帰り、ケアの中に生かせるように働きかけていきたいと考えた。

 

3)チームアプローチにおける看護婦の役割と理解

 終末期ケアにおいて、患者や家族の常に変化していく要求に応じてゆくためにはいろいろなスキルを持ったチームの存在は不可欠である。しかしながら、一つのテーマに対しても各々に価値観、捉え方が異なることにより、時にチーム内に不協和音が流れてしまうこともあり、戸惑いやストレスフルな事柄としてマイナス要因につながることがある。
 スタッフの連携の良否は患者 家族のQOLに大きな影響を及ぼす事柄である。チームは互いに相手の動きを認め合い、協力を得られることでよい結果を招いたときなどは必ずフィードバックして相手に伝えていくことは大切なことで、その役割を果たしていく上での看護婦の存在は大きなウエイトを占めていることが、濱口恵子先生の講義を通してよく理解できた。

 

 

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