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実習から学んだこと

 他院の実状を知ることは、研修以前からの目的であった。開棟して2〜3年と同様の時期にあり、病床数やその母体の規模など近しいことなどが実習施設を選んだ理由であり、ホスピスとして活発に活動されている病棟に迎え入れていただきました。実習目的は、実習施設におけるホスピスケアの実際を通して、自分の施設のケアに必要な知識・技術 態度を学ぶ。ホスピスを行う上で必要な情報を収集し自分の施設に活用できる。であり、当初の目的通り、そこでの看護婦の役割や緩和ケア病棟としての姿勢、チームアプローチの実際、機能など総合的に実習することができました。実習でなければなかなか知ることのできないコメディカルの方々の役割、実際の悩みや問題の解決例など、参考になることを多く吸収することができました。
 病棟では、環境の整備として音や光、臭い、また視覚におけるやすらぎの演出のための空間利用にも配慮されていました。また、そばにいることというコミュニケーションの手段を心がけていることを知りました。さらに自院ではまだ行われていないグリーフワークについても、その実際の方法を学ぶことができました。カンファレンスの活用方やそのスムーズな運び方の要因として、誰もが発言しやすいような用紙の工夫や時間の使い方は新鮮でした。また医師の看護婦やその他のスタッフに対する暖かい評価は、看護力開発推進の秘訣であると感じます。講義のなかでも疲れている看護婦によい看護はできないとありましたが、現実を受け止め、振り返り、さらに的確な評価をいただくことは、看護婦の心の栄養になると思います。看護婦やその他のチームメンバーとの情報の共有方法や看護ケアプランの伝達方法は発展途上であるとも思われましたが、これは私も今後の課題としていきたいと思います。

 

終わりに

 この2ヵ月間の研修での講義、実習、報告会を終えて今一番感じていることは、緩和ケア病棟がその背景となる母体によって、それぞれ特殊性を持っていることです。もちろん理想とされ、そこで行われるケアの基本は同じですが、その施設の理念や地域における役割、住民のニーズによって、症状コントロールと在宅ケアへの移行がメインとなるところと、限られた時間を過ごす生活の場としての空間を提供することがメインとなるところに大きくは分かれていくように感じられました。緩和ケアが一般にも紹介され、その必要性が広まりつつある今日、患者・家族が自らのニーズによって施設を選択する日も来ることでしょう。高齢化社会や家族のあり方の変化など患者・家族を一つの単位としてとらえ、ケアしていく緩和ケアも現在の舵状のコントロール、インフォームド・コンセント、良好なコミュニケーション、精神的ケア、家族ケア、グリーフワークなど多くの場面て、チーム医療が実践されてさらによいケアへと変貌していき、医療/実践か定着していくことでしょう。そのなかで常に現実を見つめ、自らを的確に評価し成長していきたいと考えます。
 今回の研修で自院の緩和ケアを振り返り、チームアプローチのシステムの不足や看護婦個々の知識の不足を感じました。自院での特性を生かしつつ、緩和ケアにおいて不可欠なチーム医療システムの強化を心がけ、また勉強会や研修参加、自己学習と緩和ケア教育システムの確立に努力したいと思います。
 最後に私をこの研修に送り出してくれたスタッフ、ともに学び暖かく見守ってくださった皆様、実習施設の皆様、学びの機会を与えてくださった皆様、ほんとうにありがとうございました。

 

参考・引用文献

 1) アリソン・チャールズエドワーズ著、季羽倭文子監訳「終末期ケアハンドブック」医学書院、1993
 2) 菊地美賀子 特集・癌患者のペインマネジメント「Evidence Based Nursingの研究」Nursing Today Vol12,No13

 

 

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