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 症状コントロールにおける看護婦の役割は大きく、特に疼痛緩和は、痛みに関連したアセスメントから、薬物療法におけるアセスメントと介入、非薬物療法におけるアセスメントと介入、患者家族への疼痛緩和に関する教育と幅広い知識を要し、またペインマネジメントには医療者側、患者側と問題点もあり、コントロールには麻薬も使用されるため、法的問題もからんできています。それぞれが正しい知識を持って目標に向けて進めるようコーディネイトすることも看護婦の役割なのではないかと感じました。
 また、消化器症状や排便コントロールにおいても看護婦の役割は大きく、看護婦だからこそ関われる部分もあるのではないかと思いました。その関わりのなかで根拠を明らかにして行われるケアは今後さらに望まれます。
 コミュニケーションは看護婦の技術の中でも欠くことのできないものであり、緩和ケアの患者に向き合う上でも重要な手段の一つである。コミュニケーションを取る上で大切なことは、看護婦と患者、看護婦と家族といった関係の前に、個々の人間であること、また通常の伝達や会話だけでなく、思いやりを持って相手に接することだと感じています。さらにその技術として受ける側の背景や記憶を考慮し、話術はもちろんのこと、仕種や声のトーンなどそれぞれの相手に合わせる配慮が必要だと思いました。そしてその行為が治療的な意味合いを持ち、支援や看護ケアの効果をあげることも学びました。
 家族援助論は近年めざましく注目されるようになった分野です。緩和ケアにおいても、患者と家族を1単位ととらえる考え方は基本であり、家族はそのケアの対象であるとともに、患者をケアする上でのチームの一員でもあるのです。また家族のあり方や家族観も変化し、家族という集団のとらえ方も多様化してきています。患者の人生において重要な位置を占める家族の存在が、病院という背景の中でかすんでしまわぬよう個々の家族のあり方など全体を見渡す力を養い、タイミングを合わせて関わる技術を身につけたいと感じました。また看護婦は家族にはなりえないということを肝に銘じ、中立的な立場を守り、それだからこそなしえる援助を提供していきたいと思います。
 緩和ケア病棟を開棟して以来、告知やインフォームド・コンセントの場に立ち合う機会は増えました。「身体に異状を感じる」 「がんかも知れないと検査を受ける」 [がんであると告げられる」、この時点まででも患者にとっては数え切れない予測できなかった衝撃が襲ってきたことでしょう。今までの思考過程が混乱し、ふさぎこむのは自然のことです。その精神的負担をどのように援助していけるのか。これは私にとっても大きなテーマでした。精神症状援助の講義では、その過程をふまえて患者の心理状態をモニターし、段階モデルにあてはめ、その時点での適切な援助や専門家の協力、心理的特徴を知ることが大切であると学びました。
 チームアプローチにおいて大切なことは、チームでのゴールを統一すること、それに到達するまでの方法は各種専門職に任せること、それでこそチームの意味をなすことだと学びました。具体的には同じ目的に向かって進むメンバーであることを意識し、その専門性が互いに発揮しやすい環境を作り、メンバーの立場を理解して思いやりを持ってコミュニケーションを取ることだと思います。
 緩和ケアにおける諸制度の講義により、1998年度改正の新基準、緩和ケア病棟承認施設におけるホスピス・緩和ケアプログラムの基準を再確認しました。また、利用しうる社会資源の情報を整理して知ることができ、今後の患者・家族における社会的問題や緩和ケア病棟、実際の諸問題に役立てたいと思います。また、チームアプローチやMSWの役割を実際にソーシャルワーカーとして活躍している方の生の声が聞けたことは貴重でした。

 

 

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