その大きな理由として、がんセンターでの症状コントロールが大変うまくいっているとの認識があったため、それらの実際を見ることで、どのような方法がとられているのか、そしてうまくいっている一番の要因は何かということを学ぶことが目的でした。そして実際に実習を行う中で、驚いたことがありました。それは、患者さんや家族が治療について大変しっかりと理解され、自らモルヒネの量についてアセスメントする姿が何度となく見られたからです。これはまさに、ケアの受け手である患者 家族を巻き込んでの症状マネージメントであると感しました。
この患者指導は外来においても行われており、これによって患者さんは自らの症状と向かい合い、いかにコントロールすべきかを考えます。これががんセンターにおける症状コントロールの、一番の要因だと感じました。
以上のことから、今後自己の施設において症状コントロールを行う際の課題として、
?患者の訴えをそのまま受け入れ、十分にアセスメントする。
?患者に関する情報を十分活用し、アセスメントする。
?的確な診断・判断により、その人に合った治療・看護介入をする。
?患者家族への指導を徹底することで、患者自身が治療に参加できる状況をつくる。
ということをあげたいと思います。また、これら全てに共通することとして、常に“患者中心”という認識をスタッフ全員がもちたいと思います。
(2)ホスピス病棟の在り方、ホスピスで働く看護婦の在り方を明確にし、それをふまえたコミュニケーション技術・カウンセリング技術の向上
この2つめの課題を掲げるにあたり、私の中で様々な思いがありました。それは、ホスピス病棟に勤務している者にとって、多かれ少なかれ共通の悩みのように思います。その中の一つとして、ホスピスに対する誤ったイメージがあげられます。ホスピスに入院される患者さんやその家族の中には、「ホスピス=何でもやってくれる所」といったイメージをもっている方が多いように思います。例えば、 「看護婦さんが優しいと聞いたので…」などとおっしゃる方が時折いらっしゃいますが、それがホスピスを選んだ本当の理由である場合、そのような方へのケアは大変困難なものになります。何もかも私たちに委ね、自らの生についてさえ考えることを止めてしまう場合、患者さん自身が生きる力をもち、自ら生きる価値を見つけてもらいたいと考える私は、一体どのように関わっていくべきなのか、常に自分自身に問いかけています。
これらについて、研修を通して自分なりに考えたことについて述べたいと思います。まず、ホスピス病棟に勤務する上で重要なこととして、病棟の理念や原則を常に意識することが必要だと感じました。これはチームアプローチ授業でも言われていましたが、自分たちの施設が何をしたいのか、そして何ができるのかを明確にし、これをスタッフ全員が認識すること、そしてそれを患者さんや家族に理解してもらうことで、ホスピス病棟の在り方が見えるのではないでしょうか。また、それらを常に意識することで、ケア計画の方向性に疑問を生じたときの振り返りもできるのではないでしょうか。
次に、ホスピスで働く看護婦の在り方について考える私にとって、講義の中から最も印象に残った場面として、“死への体験旅行”をあげたいと思います。
私は看護婦になって以来、ほぼ毎日がんの患者さんと関わっています。その毎日の関わりの中で、少しずつ感覚が麻痺していくような気がしていました。私にとって目の前の患者さんは、がんであることが当たり前のようになりつつあり、“人間対人間の看護”と言いながらも、がんになる前の姿がその人にとっての当たり前てあるということを、少しずつ忘れかけていたように思います。しかし、その当たり前のところにがんという病いを抱えてしまったために起こる、苦悩 不安・淋しさなどを感じることが、何よりも大切だと感じました。
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