家族ケアについて
緩和ケアの3本柱の一つに「家族ケア」がある。もちろんそれは、入院したときから始まっているのだが、特に臨終間近には、患者ケアよりも家族ケアの占める割合のほうが高いことも少なくない。そして、家族の愛情が深すぎる故に起こるトラブルもある。「家族」という言葉一つにもそれぞれの捉え方があり、ひとえに血縁関係だけをいうのではないということを思い知らされる。臨終の場において、まさしく内縁関係の人こそ患者にとって真の家族であったりする。しかし、やはり最終的には「血縁」がものをいったりするのは日本独特なものだろうか。
家族援助の実際として
?看護婦は家族ではない 家族の代わりにはなれない。家族の役割を侵さない・取らない。
?患者と家族を一単位として捉え援助する。
?問題解決の当事者は、本人と家族看護婦自身の価値観を押しつけない。
?「生き様」が「死に様」:家族として生きてきた歴史の影響・結果が現れる。
?家族関係が輻輳している実態を把握・誰を中心にした家族関係かによって家族の捉え方も異なる。
などがポイントとしてあげられる。「家族ケア」とうたわれるが故に、つい構えてしまい、余計な介入をしがちになってしまう。しかし、家族の力を信じ、家族が自立・成長できるように見守ることの大切さを学んだ。そして、注意しなければならないことは、その一つの解決策が次の家族には当てはまらないということだ。その時々に応じた柔軟な対応ができるよう努力していきたい。
コミュニケーションについて
コミュニケーション、これもまた3本柱の一つてある。
コミュニケーションには、言語的コミュニケーション、非言語的コミュニケーション、そして、言葉そのものを越えて向こう側に位置しているものを伝えるコミュニケーションがある。最後のそれは、例えば「家に帰りたい」の意味する裏側の気持ちを読み取ることである。緩和ケアにおいてはこの最後のパターンが案外多いかもしれない。
そこで、緩和ケアにおけるコミュニケーションのポイントは、
?相手の身になること(共感)
?相手の経験の中へ入り込んでこれを正確につかめる能力
?患者の視点に立って患者がとのように捉えているか理解できる能力
?客観性を保ちながら、状況が相手にとってどのようなものであるかを想像できる能力
?相手の話をじっくり耳を傾けて聴くことによって、わかったことを相手に伝えられる能力
これらを身につけることである。緩和ケアで求められるコミュニケーションは、表面的なものではなく真のコミュニケーションである。スキンシップや時に沈黙も重要なコミュニケーションの手段である。と同時に、態度そのものがとても大切なコミュニケーションといえる。優しい言葉をかけつつも、態度では大いに「忙しい」を表していたこともあったと思う。患者は敏感であり、看護婦をよく観ているはずだ。白衣を着ている以上、常にプロ意識をもって患者に接していきたいと思う。
また、カウンセリングにおけるコミュニケーションでは改めて難しさを実感することも多かった。例えば、相手のどこに位置して話すかもそうだが、相手の伝えたいことを言葉に出して確認してみることで、案外理解していない現状を知ったり…と。そして、聞き手になるときは、「相手から少し遅れて気持ちの内側をついていく」という原則は結構難しいものだった。現在、当緩和ケア病棟にはカウンセラーは導入されていないので、この基本を覚えておきたいと思う。
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