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症状コントロールについて

 症状とはその人が感じる主観的なもので、患者が自ら症状マネジメントできるようになるために、私たち看護婦は「基本的知識」「基本的技術」「基本的看護サポート」の3要素を提供しなければならない。そして私たちは、患者の訴えに対して症状をそのまま受け入れる姿勢と、訴えにバイアスをかけず対処てきる能力をもっていなければならない。

1)痛み
 痛みとは、「その人が表現する通りのものであり、その人が痛みがあるといったときにはいつでも存在するものである。痛みは実際のあるいは潜在的な組織損傷、あるいはそのような損傷として説明できるようなことに対する自律的、心理的、感情的反応と関連して起こる」と定義されている。前にも述べたように、痛みという症状も「主観的」なものであるため、観察のレベルで判断してはいけないということを改めて感じた。 「本当に痛いの?」と思ってしまったら、もうそこでおしまいということだ。確かに痛みにはいろいろあって、解剖学的・生理学的に証明できない痛みもある。スピリチュアル(霊的)ペインがその代表ともいえる。しかし、ここでも「スピリチュアル」と決めつけている自分があったかもしれない。私たちナースには、いかに正しくアセスメントできるかが問われるのだと思う。そして、疼痛緩和においては次の4点が要求されている。
 ?痛みに関連したアセスメント
 ?薬物療法におけるアセスメントと介入
 ?非薬物療法におけるアセスメントと介入
 ?患者家族への疼痛緩和に関する教育
 そして、これらにきちんとかかわれるためには、やはり「知識」が備わっていることが前提であるといえる。
 身体的な痛みに対しては「WHO癌疼痛治療ラダー」が主として用いられ、
 ?睡眠時間の確保ができる
 ?安静時の痛みの消失
 ?体動時の痛みの消失
と3段階にステップアップしなからコントロールすることが理想とされている。
 次にスピリチュアルペイン(ケア)について学んだことを述べていきたいと思う。
 緩和ケアにおける霊的とは、人間として生きることに関連した経験的一側面であり、身体感覚的な現象を超越して得た体験を表す言葉である。霊的が宗教的と同じ意味ではない。霊的な痛みとは、「自らの存在の痛みであり、存在の危機に瀕したとき、人は過去 現在・未来の存在に対して痛みを覚える。人間存在常に他者との関係のなかにあるので、霊的な痛みは関係の痛みとしても捉えることができる」とされている。
 ケアのポイントは、
 ?患者をあるがままに受容する。
 ?患者の言葉を傾聴し、言葉の背後にある意味を感じとる。
 ?患者に共感的態度で接する。
 ?患者自身が気づいていないスピリチュアルニードを言語化、意識化させる。
 ?スピリチュアルペインが話題にできるような受容的、温かい雰囲気をつくる。
 ?患者の人生観、人間観、死生観を自由に話せるような雰囲気をつくる。
 ?祈りや瞑想を活用する。
 ?適切な聖職者を紹介する。
 ?患者が宗教的行為や儀式に参加できるように配慮する。
 ?自然と触れ合える機会を提供する。
 ?音楽・絵画などのさまざまな芸術に触れる機会を提供する。
などにまとめられる。
 「スピリチュアル」という言葉があまり耳慣れないためか、とても難しいことに感じてしまう。しかし、緩和ケアにおいては大切なケアの一つである。魂に応えるということは言葉でいうほど簡単なことではないと思う。日本の文献は、まだまた数少ないということだが、奥深い分野であり、今後さらに深めていきたい。

 

 

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