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人として患者をどう尊重していくか

筑波メディカルセンター病院
山口凉子

 

はじめに

 自分の病院に来年度、地域がんセンターが併設され20床の緩和ケア病棟もできることになっている。現在は一般病棟でがん看護を行っているが、できたら緩和ケア病棟で終末期看護に携わりたいと考えている。しかし、自分の緩和ケアに対する知識不足は明らかであり、知識を深める必要性を感じていた。このたび、緩和ケア養成研修が開講されることを知り、ぜひ受講をと希望をした。8週間の長期にわたることや、はたして多くのことを理解していけるかなどの心配もあったが、しかし緩和ケアの基礎を学び、実践できる能力を育成することをねらいとする研修は、まさに求めているものであった。回りの理解のもとに受講できることとなり、課題を?緩和ケアの基礎を学び、緩和ケアの考え方を理解し、判断、実践能力を身につける。?進行がん患者の心理的特徴を学び、それをふまえて、がん患者を支えるコミュニケーションの在り方を学ぶ。?家族ケアの在り方を学ぶ。と挙げ研修に臨んだ。講義と病院実習を終え、今回の研修で学んだことを報告する。

 

講義から学んだこと、明らかになったこと

 講義は倫理から入り、生命倫理、看護倫理を学んだ。私たち看護婦は病気を治すことはできないし、また完治することができないとき、私たちのできることは患者を支援していくことである。その中で看護婦、患者はさまざまなジレンマにおかれるが、正しい中でどちらを選ぶかのジレンマに陥ったとき、何を基準に選ぶかが看護倫理となる。何を根拠に判断するか−基準になるのが看護婦の規律であり倫理規定である。どちらに立つかでとる行動は変わってくるものであり、私たちのケアはその人その人の人生、価値観、大事にしていることを知って、ケアする必要がある。患者がどうしたいのか、患者の自己決定、意志決定をどれだけ尊重していくことができるかが大切となる。また、人間としての尊厳がどれだけ守られるかが一の問題であり、自分の思いこみだけでケアをすすめない、人として患者をどう尊重していくかであると学んだ。常に自分自身の行動には責任を伴っていることを自覚することが必要であると、改めて認識できた。
 WHOの緩和ケアの定義「緩和ケアは、病気の治癒をめざした治療がもはや有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである。痛みやその他の症状のコントロール、精神的、社会的、そして魂の問題への援助が緩和ケアの主要な課題である」から、緩和ケアの基本的在り方が導かれる。この考え方をふまえ、現場でいかに緩和ケアが実践されるかであると考える。緩和ケアの看護が一番めざしているのは、がん看護全体の中での緩和ケアとしての確立であるが、病院の母体が何かによって違ってくるし、全体で認められないと宙に浮いてしまうことは認識しなければならないこととなる。緩和ケアにおけるケアの目標は、?WHO「患者とその家族のためにできる限り有効なquality of lifeを実現させることである」、?苦痛症状が緩和し患者の生活の幅が拡大すること−症状コントロール・基本的ニーズの充足(可能な限り患者の望む方法で)・良好なコミュニケーション、?家族にとって心残りのないよう看取りができること、である。ケアの内容としては、?症状コントロール、?良好なコミュニケーション、?日常生活の援助、?家族のケア、となる。それぞれの自分の学んだことを考えてみる。

 

 

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