2)現場におけるチームアプローチを振り返る
(1)他職種との関係について
チームアプローチにおいては、私の勤務する緩和ケア病棟でも、いくつかの問題を抱えている。現在の問題の一つは、栄養課との関係である。がん終末期において、患者さんの食事の工夫は、日常のケアの中で重要な位置を占めると考える。よって、方々の緩和ケア病棟でも積極的に取り組んでおられ、様々な工夫がなされている。実習施設であった聖隷三方原病院でも、いかに患者さんに食事を楽しんでいたたくかという努力や、目でも味わえるような工夫がうかがえただけに、私たち看護婦にとっては、「もう少し、何とか……」という認識がある。私たちも、行事のときなど機会を見つけては、患者さんに目先の変わったもので楽しんでいただこうと努力しているが、やはり普段の食事には栄養課の協力が不可欠である。
ところで、濱口恵子先生は講義の中で、“チーム役割の曖昧さ”がチームにおける葛藤と混乱の原因であり、この“役割葛藤”をクリアする要素には、「役割がだふっていてもよい。自分のテリトリーを守ろうとするのではなく(期待される役割との不一致)、今できることの最大(専門性・責任の発揮)を提供する。人間として互いに成熟していること(異質を取り入れるゆとり)」があるといわれた。そこで、私たちと栄養課の関係を振り返ってみると、この“役割葛藤”の存在に気づくのである。また、講義の中で、トランプとパズルを使ったゲームを行った。いずれも、グループメンバー5名が、同じ目的意識で(数字や図形を合わせる)互いにコミュニケーションを取りながら、さらに互いの情報(手持ちのトランプ及びパズル)を交換しないと完成を見ないというゲームで、チームアプローチを身をもって体験したという感覚であった。
これを機会に、「やってくれない」といって非難するばかりでなく、互いに“患者さんの食欲の亢進”を目標に情報交換をし、協力し合う、ということから始めてみようという前向きな気持ちになることができた。
(2)実習を通して 〜専任医師と看護婦における課題〜
聖隷三方原病院のホスピスには、4名の専任医師が常勤している。そのため患者さんへの対応がタイムリーな上、看護記録をよく読んでおられるので、その中から疑問点や問題点を抽出し、迅速に患者・家族へのアプローチが行われていた。毎月曜日には医師同士のカンファレンスが行われ、問題や治療方針の共有がされている。とにかく、いつでも看護婦と医師、看護助手、クラーク、SW、チャプレンとが互いに話し合える環境にあった。
一方では、“常に医師による症状のコントロール及びインフォームド コンセントが行われている”という日常に、“看護婦が依存的な傾向にある”という問題がうかがえた。
当院では、毎朝のカンファレンスや申し送りの中でも、症状のアセスメントやそれに対する医師の指示、患者 家族の問題などにおいて、看護婦同士が常に検討し、意見の交換をしている。主治医制であるためか、患者・家族・主治医との関係をコーディネートするのは看護婦の役割であるという認識がスタッフに定着している。また、そうでなければ、ホスピスにおける患者・家族へのケアが立ち行かないというのが現実である。
この両者のシステムにおける看護婦と医師のチームアプローチ上の問題を比べると、どちらか一方にチームの力が偏っている印象を受ける。いずれにせよ、患者さんやご家族へのケアが十分提供できていれば問題はないのたが、さらなるケアの質の向上を目指すためには、それぞれのスタッフが互いの専門性を発揮できるチームづくりが望まれる。
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