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研修の評価

 この研修のねらいである「緩和ケアの基本的考え方を理解する」ということに関しては、緩和ケアに関心のある受講生であることから研修終了後により考えが深まり、今まであいまいに行っていたことの裏づけがより理解できた。自分の考えを確立させ、課題を明らかにしていくこともできたと考える。
 専門的知識技術を習得し実践能力を高めるために、今回の研修は部分的に知っていたこと、行っていたことをトータルに学習したことで、実践の場で統合的に知識・技術として利用できると考える。
 研修終了の5段階式の自己評価ては、ねらい、内容についての理解度は[非常によく理解できた」と「よく理解できた」で占められていた。また研修での体験、理解したことを現場で役立てることができるかの問いには、ほとんどが役立てることかできると答えている。約1名はすでに分っていることが多かったとして少し不満としていた。しかし、9名の受講生は非常に役立てることかできるとしている。新たに緩和ケア病棟を立ち上げるための任を負ってきた人も、自分の中ではその構想が形作られたようであった。この研修が施設で役立てることができるかという問いに対しては、受溝生の背景により、役立たせられる部分と無理な部分とがあることを感じている受講生もいた。2名は今まで行っていることなので新しい発見か少ないとした受講生もいたが、全く新しい発見がなかったわけではなかった。各受講生はこの研修の学びを各職場に持ち帰り、活用したいと考えている。
 またこの研修は、全国的にネットワークを拡げることも一つのねらいといえる。受講生もこのネットワークの大切さに気づき、出会いを財産にして連絡を取ろうという言葉も聞かれるようになった。
 細かいプログラムの組み立てに関していえば、総論から各論の組み立て、バランスについていえば適切であったと考える。ホスピスでの実習開始前に「社会資源の活用」の講義か入れば一層効果的であったと考えている。知識を統合して実習の場に臨み、その結果を自分なりにまとめる時間を取ることでより効果的に実習での気づきを施設に生かすことができたと考える。そのためには実習終了後に2週間くらいの時間的余裕かあるほうかよいと考える。また少なからず苦手意識を拭い去れなかった腫瘍字、倫理学関連なども、必要性、講師の魅力と講義法等で新たな興味を持ち、学習をさらに深めようとしている受講生もいた。体験学習やプレゼンテーションをすることで、積極的に取り組むことができたと考える。またホスピスでの実習は宿泊場所、距離、経済等の問題はあったが、ホスピスを体験できたり、自分の施設以外の体験ができ、実習に行かなかった施設のことも他の受講生との情報交換で追体験でき、有効であった。
 各受講生の熱心さは、講師が異口同音に指摘された。
 緩和ケアに対する考え方も、受講生にとっては「愚者や家族が可能な限り人間らしく快適な生活が過ごせるように援助する」ということは当たり前のことかも知れないし、それに驚きを示している受講生ももちろんいた。知識 技術に関しても、能力が低いために与えなくてもよい苦痛を与えているかもしれない。特定の施設に入院した人だけ人間らしいケアを受けられるというのではなく、どこにいても同じようなケアが受けられることが必要である。個人個人が力をつけることはもちろん、それと同時にネットワーク網を密にして、有効な知識の共有が図れたらよいと考える。そのためには、研修後も互いに連絡を取り、そのネットワークの絆を太く強くし、「困っている今」に助け合える関係を築いていくことが重要である。

 

 

 

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