特に今私どもが考えておりますのは、自然環境の状態、例えば貴重種の分布ですとか、生態系保全上重要なところの分布ですとか、そういったようなものの存在を早く世の中に出していこうということです。、いろんな開発が起きて、あとからそこは重要なところだよ、貴重な動植物がいるよ、ということでなくて、むしろ先に、そういう大切なところはどんどん明らかにしていこうじゃないかということで、今その部分を急いでなんとかやっていこうかというようなことをしております。
それから、先ほどの岸先生の話にも若干ふれるんですが、自然豊かなところというのは、先ほどはイルカの形だったんですが、意外といろんなところとつながりがあるわけでございまして、少し手をかければ、そのつながりがもっとしっかりしてくるんじゃなかろうかということです。その生態系のネットワークというようなことも考え始めております。従来の規制行政、国立公園の指定なんかもみんなそうなんですが、線引きをして、その中をしっかり守っていこうというのが従来の線引き規制行政だったわけですが、日本の自然環境を全体として保全していくためには、そういうのだけでは対応できないことが明らかになってきました。国土全体にわたって、いろんな重要なもの、みんなが気にしていなければいけないもの、そういったものは早く、皆さんの前に出していこうというようなことを基本に、今頑張っております。その他に、自然とのふれあいということで、環境教育をなんとかしっかりやろうといったようなことも頑張っておるところでございます。
先ほど環境保全行政が縦軸で流れてきたのが、もうその縦軸では対応できない、もう横に広がって相互に関連していると言いました。地球温暖化から、生物多様性の保全だとか環境教育だとか現在の取組みについて言いましたけれども、このような問題も同様です。例えば藤前でも、生物多様性の問題と、それからごみの問題、それを突き詰めていけば、リサイクルですとか、人々の生活の問題。ごみを出さないような生活をするといったようなライフスタイルの問題というように、問題は相互に関連し合っています。そういうことで、オール環境と言ったらいいんでしょうか、そういう形でいろんなものに対応しなければならない、そういうことになってきていると思います。
それから、行政だけの対応というのはやっぱりもう限界がある。これは、もう気がつきはじめて、いろいろなところでいろんな方々の参加を得やすいような、支援を得やすいような、そういう施策を取ってるところでございます。もう行政だけで環境保全はできないということに気がついております。
それから、行政改革なんかもそうなんですが、政治という動き、政治の役割というものにも期待せざるを得ないというようなところにさしかかってるんじゃないかなと思っております。
もう時間が来てしまったわけですが、最後にちょっとだけ時間をオーバーしてしお話をさせていただきます。われわれの行政というのは、実は市民の方々、住民の方々に、ハッパをかけられ、激励され、叱咤されて、やっとこういろいろ動いてくるというお話をしましたが、じゃあ、これからはいろんな問題が横に相互のつながりをもっている中でどう動いていくのかということです。
この辺は、私見も入りますから、あらかじめそういうことで聞いていただきたいと思いますが。結局これから、今もそうなんですが、これからの私どもの行政の目指しているところは、やっぱり社会の仕組みを変えるということだと思います。先ほども言いましたように、社会の仕組みそのものが共生型というんでしょうか、保全型というんでしょうか、循環型といったらいいんでしょうか、社会の仕組みそのものが環境保全型の社会にならなきゃならないと思っております。これまでの物質文明、見かけの豊かさ、便利さといったものを飽くなく追求してきたわけでございますが、もうそういう時代は終わりでございます。一人一人が環境を考えたライフスタイルをもつ、また、社会全体もそういう一人一人の動きを受けて環境保全型になっていく。どうしてもそういう社会でないと、今後の環境保全はどうもうまく図れないということにもう気がついております。ですから、環境行政というものも、目標としては新たな社会の仕組みをつくるというところに置いて頑張っていきたいと思っております。
そのためには、環境に関係する情報の提供ですとか、それから、あらゆるところでのアセスメント、特に事業アセスだけではなくて、計画段階のアセスメントですとか、それから、より皆さんがいろんな形で参加していただけるように、いろんな計画づくりだとか活動だとかに参加していただけるように、そういうための仕組みづくりをして参加していただきやすくするということも今以上に必要になってこようかと思います。