こうわれわれは呼んでおりますが、そういった様な社会に、社会全体の仕組みを変えないとなかなかうまくいかないことに気がつき始めたのが最近であります。
ここまでざっと、ここ50年間くらいの動きをかなりはしょって見てきたわけでございますが、この中で是非言っておきたいことが二つございます。一つは、やはり環境問題は、どんどんどんどん多様化しているということが一つでございます。環境行政の幅というのはどんどん広がってきております。もう一つは、環境行政の特質だと思いますが、要するに国の動き、国の行政の動き、これを自治体が引っ張っていること。そして、自治体の動きは、住民の皆さん方が引っ張っていること。これが、やっぱり環境行政というものの特質じゃないかなと思っております。この50年という短い間に、行政の幅がすごく多様化したというのがありますし、なんとかそれにいろんな形で行政は追いつこうとしておるんですが、その行政の動きの一番先には住民の方々の動きがあって、それが自治体を動かし、そして国を動かしてると、ここに環境行政の特質があろうかと思います。
例えばそういったようなものとして、アセス法の動きですとか、それから自然環境保全法の動きですとか、そういうのはみんな今のような流れの中で、最後にやっと国の行政が動いたというような状況で、この50年は推移してきてるんだと思います。
こういったような特徴がありますけれども、私は、環境行政というのはこれでいいんだというように思っております。国がまず発想して、それを下に流していくというんではなくて、やはり現場から問題が起こってきて、それを自治体が受け止め、さらにそれを国が受け止めると。多分皆さんからすると、国は何してるんだということになろうかと思いますけれども、こういったような環境行政、これは基本的にそういう流れでいいんではなかろうかというように、私は思っております。
そういったような流れを踏まえて、今に至っているわけですが、じゃあ、今、私どもの環境行政って何してるのということでございますが、そういうことについてちょっと話したいと思います。まず、今、行政全体で大変なというか、大きな動きは、これは環境行政に限ったことじゃありませんが、二つございます。一つは地方分権という動きでございます。皆さんご承知だと思いますが、国の行政の下働きを都道府県や市町村がするんじゃないと、それぞれ独立した動きをするんだと。そして国の下働き業務は一切なくせというのが、今回の地方分権でございます。ですから、国は、計画だとか基準、そういうものをつくりなさい。その実施は、ほとんど自治体がやっていくんだというようなのが基本でございます。ただ、環境の分野ではかなり国がやるべきこと、国の責務というものが他の行政と比べたら多いんではなかろうかと思っております。特に自然環境保全の分野では、例えば国立公園の管理だとか、野生生物の保護・保全ですとか、そういう面で、国の責任というように整理されたものがかなり多くなっております。
それから、もう一つの大きな動きは省庁再編の動きでございます。今年の春の国会で、省庁再編の基本法というのができました。2001年には、現在の国の行政組織、1府20省庁あるわけですが、これを2001年には1府11の省庁に再編するということでございます。幸い、そういう中で、新しく、その1府11省庁の中に、環境省は必要であるということが決められております。これは、環境保全が重要であるというような認識があったためだろうと思っております。しかしながら、環境省を2001年にはつくるということは決まっておるんですが、その具体的な中身というものははっきり決まっているわけじゃありません。一体新しい環境省というのはどういう分野を担うんだということの作業が今されておるわけでございます。私どもとすれば、今の環境問題に十分対応できるような体制、そういうものが新しい環境省では必要だというように主張をしてるところでございますが、あの省庁再編の何省ができるか検討されていた時には日本国中大騒ぎしていたんですが、それが決まったあと、肝心の中身をどうするかという議論をしてる今は、もう世の中の関心は他に去ってしまってるということで、ちょっと気にしているところでございます。
今、環境庁というのはたった職員数1000人強、予算は年間800億でしかないわけです。それで本当にその1府11省体制の中の一つの省としてやっていけるのかという話がよく出ております。多分、全体の中で横並びしてみれば弱小もいいところだと思います。