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今盛んにいろんなところで実施されておりますビオトープづくり、これももうその当時に提言しております。それから、身近な自然は大切だというようなことを主張しています。これは確か1980年に勉強会の成果として出したと思うんですが、ちょっと早すぎたかなというようなことを思っております。多分そういうのが90年代であれば、受け入れられた考え方だと思いますが、当時は世の中になかなか受け入れられなかったということです。この頃、その身近な自然、ふるさとの自然といったものの、その保全要望に対してどういうように対応してきたかといいますと、いくつか制度としてしてきたものもあります。例えばふるさと自然公園づくりですとか、自然観察の森整備事業ですとか、そういったような施設という概念でそこの自然を丸ごと抱えて護ってしまおうという動きもありました。

 それから、この頃の動きでもう一つ大きいのは、自然観察ですとか、自然保護教育といったようなことが盛んに始められたことでございます。そういったような活動を行うことによって、身近な自然などをどんどん使っていこう、使うことによって、そこの大切さをわかってもらおうというような動きを始めたわけでございます。またこの表にも書いてございますが、1970年代の終わりのほうに、ナショナル・トラストの動きの先鞭を切るような天神崎の問題ですとか、知床の100平方メートル運動ですとか、みんなこの時代に生まれています。

 これはどういうことかといいますと、先ほど言いましたように、当初の環境行政の中心は規制行政にあったわけでございます。いろんなところの住民の方々、団体の方々からいろいろな告発を受けて、法規制で対応するということだったわけですが、ふるさとの自然だとか身近な自然だとか、こういうことになってきますと、そういう手法は通用しなくなって、自然観察ですとか、そして知床・天神崎で始まったようなナショナル・トラスト運動ですとか、そういったような、要するに行政が法規制の中で護るんでなくて、住民の方々、団体の方々が自らそこを護るための運動に参加するというような動きがこの辺から出始めたということでございます。

 ナショナル・トラスト運動でいいますと、このあと、1983年には「ナショナル・トラストを進める全国の会」というのが結成されまして、私ども環境庁としても、そういうものを支援しなきゃいかんということで、1985年、86年と、2年続けていろいろナショトラ関係の団体が活動しやすいように税制面の改正をやったところでございます。もちろん、この税制、実はまだまだ課題がありまして、ナショトラ団体の方々から、もっと使いやすくしろということでいつも怒られていますので、この税制改正問題が終わったわけじゃありませんが。

 1980年代は、参加という時代に入ってきておったわけです。その住民の方々、団体の方々、そういう人たちが、自ら参加して保全活動を始めたという時期だったと思います。

 私ども環境庁としても、この頃から参加を意識した行政を始めています。例えば自然環境保全基礎調査というのがございます。これは全国の自然の状況をしっかり把握しようということで、植生図をつくったり、海岸線の改変状況を調べたりと、こういったようなことをやっておるわけです。これを5年おきぐらいに全国調査をしています。このため緑の国勢調査と、こう呼んでおるわけですが、この自然環境保全基礎調査が1973年に始まっています。それの何年目だったですかね、2回目ですから78年くらいの調査のときに、もっと多くの人たちに参加してもらおうということで、身近な生き物調査というものを始めました。確か一番最初のときは5万人くらいの方々が調査に参加してくれたと思います。こういうことも当時から始めたわけでございます。

 それ以外でも、この基礎調査全体では、私どもから都道府県に委託したりして実施しておりますが、その最前線で調査してくださる方々が沢山います。大体6000名くらいの方々がこの調査に参加してくださっているということです。いろんな人たちの参加でこの調査が行われているということでございます。

 一方、いわゆる公害というほうも見ましても、それまでの規制で対応できる、いわゆる企業公害、そういったものから、生活公害といわれる騒音ですとか、それから自動車公害ですとか、被害者も加害者もみんな住民であるというようなことがやはり問題になってきました。まさに全体として環境問題が多様化してきている。

 

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