講演
自然保護と環境行政の方向
鹿野 久男
【司会】締めくくりとして、環境庁自然保護局審議官鹿野久男さんにお話していただきます。鹿野さんは千葉大学園芸学部ご卒業になりまして、同じ年に厚生省国立公園部に入省になりました。途中で環境庁が発足をいたしまして、環境庁の自然保護局に移られたわけです。長崎県へ出向されたこともございます。国立の環境研究所環境情報センター長、環境庁では自然保護局の国立公園課長、自然保護局計画課長等をご歴任、現在長官官房審議官自然保護担当の方でございます。
【鹿野】ただいまご紹介いただきました鹿野と申します。紹介にありました通り、私、大学卒業後、当時環境庁はなかったわけでございまずけれども、当時は厚生省の中に国立公園の管理をする仕事があったわけでございまして、そちらに入省しました。途中で環境庁ができたわけで、以来、環境庁に移って、今日に至っております。おおよそ30年、自然環境保全の仕事をしております。
きょうは、これから50分ばかりの時間をいただきまして、「自然保護と環境行政の方向」ということでお話させていただくことになっております。お手元にレジュメを用意しました。21ページでしょうか。まず最初に、今日までわが国で自然環境保全、その行政がどういうように動いてきたのかということ。ここ50年くらいの話でございますが、20世紀の後半、わが国の環境行政はどのように動いてきたのかということを、私の専門分野でございます自然環境保全行政を中心にして、環境行政全体の流れを追ってみたいと思っております。その後に、現在、今どんなことを環境庁はやってるのかということをご紹介し、最後に、新たな展開の方向として、これから環境行政はどうなっていくんだろうかというあたりのお話をしたいと思います。
環境行政というのは、この50年、ものすごく変化してきております。また、環境行政の変化の仕方というのは、他の行政とはかなり違った要因で動きますし、違った動き方をしております。きょうのこの話の中で、そういったようなことが、皆さま方にうまく伝えられたらと思っております。
それでは、まず最近の50年、これまで自然環境保全行政、環境行政全体がどういうように変わってきたのかということについてご説明申し上げたいと思います。お手元の資料の一番最後のページ、22ページに表がございます。自然保護行政の動きということで、全体としてどういう動きになってるかということを、年表形式でまとめてございます。この表を見ながらお聞きいただきたいと思います。
表の一番古いほうは1931年とか、1800年代の話とか書いてありますが、この際あまり古い話はやめにいたしまして、日本の高度経済成長時代、そのあたりから話をしたいと思います。この表でいきますと、1950年代、そういうあたりぐらいから話を始めたいと思います。
高度経済成長という、わが国のあの時代、昭和30年代、1950年代の後半ぐらいから始まった日本の高度経済成長は凄まじいものがあったと思います。会場の皆さん見渡しますと、多分私よりお年の方もおられますので、よくご存じだと思いますが、あの昭和30年代の動きというのを思い返していただきますと、その前のわれわれ日本人の暮らしと、
