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聴講者のメモから

「小網代の森の保全とナショナル・トラスト支援」

(1)アカテガニの暮らす谷・保全へ
 神奈川県・三浦半島の一角にある小網代の谷は、アカテガニの賑わい暮らす所である。リゾート開発の危機にさらされたこの谷を市民、行政の長年の努力が実り保全への道が拓けた。谷の自然を紹介しながら保全までの市民活動の道のりと、今後の保全策の推進に係わる課題などを報告する。

(2)完結した自然集水域生態系(スライド?〜?を使って)
 小網代は海辺の自然拠点で、一平方キロの規模の谷の紹介に始まり、森・干潟・海がひとまとまりとなった<完結した自然集水域生態系>の様相を見せ、日本でも珍しいランドスケープ、生態系と思われる。そこに生息する生き物の多様性も豊かである。

 その象徴がアカテガニで、森全域で暮らし、海辺で放仔し、海で幼生期を過ごし、小網代の自然を天蓋種として代表する生き物である。真夏の大潮の晩の放仔のドラマを中心としたアカテガニの暮らしへの注目や共感は、小網代保全の世論形成を大きく支える力になった。小網代はアカテガニたちが守った谷といえそう。

(3)保全への道・3つの時代(小史/開発計画から保全方針の表明へ)を使って
・第一期:1983〜1989/リゾート開発の強い意向に対し、代案を提示しながらリゾート開発の回避を目指した時代。県側の賢明な判断が得られた。
・第二期:1989〜1995/行政の保全ビジョンの形成を支援しながら、調査・ボランティア活動を強化した時代。啓発活動の面で、かながわのナショナル・トラスト運動を支援した。
・第三期:1995〜現在/全体保全実現への過渡期の保全・活用・管理の時代。市民間・市民行政間のパートナーシップを強化しながら、全体保全実現のための作業に参加してゆく道を探る。啓発だけでなく、実際の維持管理等の面でも、かながわのナショナルトラスト運動との連携を強化して行く方向。

(4)小網代保全を目指す市民活動の工夫
小網代の森を守るための市民団体の活動を簡単に紹介すると、次のようになる。
*野外活動調整会議の推進/小網代保全の啓発、特にマナーづくりに力を入れ、管理の側面支援をしている。
*フィールドスタッフ育成/保全の仕事を効果的に進めるため、フィールドスタッフを育成し小網代の自然に通じた上でボランティアの現場に出るようにする
*カニパトネット推進/アカテガニの観察のためのパトロールを強化し、保全と観察が十分に行えるように出来た各種団体間のネットワーク。
*広域的なネットワークの形成/小網代野外活動調整会議よりももう一つ大きなレベルの市民ネットワークに支援を求め、小網代保全運動もその一部に含まれる大規模なネットワークの中で、互いに連携し活動していくことになっている。
*各種の資金支援回路の確保/かながわのナショナルトラスト支援/自治体、かながわトラストみどり財団、小網代野外調整会議の連携による活動で、最も大変な資金をどう調達するか。各市民団体と連携しながら、一般市民の支援や企業セクターからの援助をいかに獲得していくかが課題である。みどり財団と市民セクターとの連携を強化し、ひいては神奈川県のトラスト活動が大きく発展するよう期待する。

 

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