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パトロールの人がいないときに勝手に市民がやってきて、例えば蚊とり線香を置いたままで帰っちゃう、それをどうするか。こういう状態が続くようだと、カニパトネットワークは大変ありがたいし、ご苦労だとは思うけれども、出入り反対と言わざるを得ないというような強い声が地元から出てくるわけです。そこで、去年から小網代の野外活動調整会議が予算を調達して、思いきって警備会社を頼んでいます。専門の警備会社に、パトロールがつかない週末は、業務として、カニパトの基本案内と安全保全の業務をしてもらっています。市民団体が会社を雇って、警備活動をやってもらって、これで、地元の人たちはとても安心してくださいました。今年も喜ばれました。夜安心して寝られると。そのために去年は二十数万円、今年は40万円近いお金がかかりますが、それは活動調整会議が調達する。今年は、財団のから5万円ほどの支援も来ました。とにかくそういう苦労をやれる組織を今つくっている。

 といいうわけで、自治体、かながわトラストみどり財団、小網代野外活動調整会議。一応役者が3者揃って、野外活動調整会議と小網代の森保全対策協議会を通して連携して、全体保全が固まるまでの、あと8年とか10年もたせていかなきゃいけないわけです。どこでも同じですけれども、このプロセスで一番大変なことというのは、やはり一つにはお金です。作業を進めるためにはいろんな資金が要ります。その資金をどう調達するか。もう一つは、優秀な能力をもったボランティア・スタッフがつかないと、仕事が進みません。基本は、会員や有志からの会費や寄付ですが、小網代の森を守る会のレベルでいえば、例えば、日本野鳥の会ですとか、あるいはいくつかの企業から協賛金のような形で資金支援を受けた実績があります。ボランティア・スタッフの獲得には、例えば小網代の森を守る会のレベルでは、フィールド・スタッフを養成するための定期的な、ほぼ毎週誰か入ってると思いますけれども、スタッフ養成のプログラムをもっています。うまく機能していると言い切れはしませんが、このプログラムで小網代の自然に通じていただき、それからボランティアの現場にでていただくという段取りです。

 それだけでもどうにもしょうがないので、小網代野外活動調整会議よりさらにもう一つ大きいレベルの市民ネットワークにも支援をもとめています。小網代もその一部に含まれる多摩・三浦丘陵群と呼ばれる領域に、県の財団の活動と連携するナチュラリストの枠組みができています。ここにある「いるか丘陵ネットワーク」というものです。

 スライドの画面に、マンガのようなものが出てきましたけれども、これ、多摩・三浦丘陵群とよばれる丘陵域の図面です。実は小網代が位置している三浦半島というのはそれ自体が丘陵地なんですが、この丘陵は、そのまま東京と神奈川の境を伸びて関東山地の縁まで行きます。高尾山という山が東京の西にあるんですけど、そこまで伸びて、約70キロの多摩・三浦丘陵群という名前の丘陵域を構成しています。この上に、いろんな市民活動、自然保護活動をやる集団がある。特にこのあたり鶴見川という川の流域ですが、ここには鶴見川流域ネットワーキングという50団体ほどが連携した流域活動集団があって、そのうちのナチュラリストの集団組織、私が代表をやっております鶴見川ナチュラリストネットワークなどが、小網代にお付き合いしています。さらに、この丘陵のど真ん中に、横浜・金沢という、やっぱり海・山・川の揃ったおもしろい場所がありまして、ここにもネットワークが一つ、二つあります。で、小網代、鶴見川流域ネット、金沢・円海山のネットワークなどが中心になって、この丘陵上で、市民自然保護活動のネットワークをつくりました。この丘陵、なんかこうイルカに似ているでしょう。だから「いるか丘陵」と呼んでるんです。で、「いるか丘陵ネットワーク」なんですね。

 このいるか丘陵ネットワークでは、それぞれの団体が開催する自然保護活動、あるいは自然観察のいろんな公開可能な企画、あるいは独自に企画する有料の講習会だとか有料のバスツアーみたいなものを、お互いにメニューを出し合って、「いるか丘陵ネットワーク自然観察企画」ということにして、それにかながわトラストみどり財団のほうから事務局経費支援を受けています。トラスト財団のほうは、共催連携している市民ネットワークが推進する企画をトラスト啓発の機会とすることができる。われわれのほうは、トラストからある程度の支持を受けながら、それを基にしてトラストの会員も増やしつつ、それぞれの持ち場の自然保護活動も推進できる。うまくいけば、

 

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