●スライド18

ここにメスガニがいて、ここに胡麻粒のようなぽつぽつが見えるかと思うんですけど、このぽつぽつが全部、卵ではなくて幼生、アカテガニの幼生です。大きな個体になると、一度で2万とか3万の子どもを放します。
●スライド19

これが放された幼生。ゾエアといいます。似たものをご覧になりたければ、こちらではジャコというかもしれません。関東ではシラスといいますけれども。イワシの幼魚を茄でたものを食べますよね。あれのちょっと値段の高くないもの。中に來雑物のあるもの。乾物屋さんとか魚屋さんで買っていらして、箸でちょっとこう積み木崩しみたいにして崩していくと、中にヘルメットをかぶって刺が付いたようなこんな4本足の動物が出てきます。いろんなカニのゾエアがあの中には入っています。アカテガニのゾエアというのは1ミリほどで小さいので、シラス干しの中になかなか入らないと思いますけれども、似たものは見ることができます。
●スライド20

これがメガロパ。3週間海で過ごしたあとのものです。まだカニじゃないですね。ここにこんなおむつを付けたような構造がある。この状態で山に帰ってくるという暮らしをしています。こんなアカテガニのお産に付き合うのがカニパトロールです。1991年からですから丸8年ほどですか。この活動が、保全啓発の中心的な仕事を果たしてきています。
スライドはこれで終わりです。今見ていただいたような自然領域を、ゴルフ場を中心にしたリゾート基地として開発したいという地元の熱い期待があって、話が進んでいたわけです。結果的にはそれを、保全領域に転換することができたわけですけれども、この間の15年ほどどんな歴史があったか。お手元の資料にもやや細かく書いてありますが、その小史を三つぐらいの期間に分けてお話しておきます。
まず第一の期間は、1983年、保全を意識した市民活動が始まってから、89年ぐらいまで、約6年間くらいの時間です。この間は、地元はとにかくリゾート開発をしたがった。ちょうどバブルの絶頂のころだったと思うんですけれども、是非とも大開発をしたいというのが地元の強い意向でした。それに対して、自然を守りたいという側は、とにかくリゾート開発、単純なリゾート開発でない開発をしょうという主張を主な主張にして、中にはゴルフ場で全部谷を壊すんじゃなければ、例えば芸術工房だとかお味噌工場だとか、もっとおもしろい、谷の構造をそのまま生かしたような開発だってあるんじゃないか、それでもいいんじゃないかというような意見を言う人もいました。とにかく多様な意見で、リゾート開発で谷を全部潰すというのだけは回避しようと、そういう主張をした時代でした。
その時代の結末は1989年。その年の春に、神奈川県がゴルフ場の規制を一部解除するという動きがあって、そのときに、ゴルフ場解除にはもちろん反対、ただし解除するなら徹底的に自然を大切条件がつく形で解除されるような誘導をしようという、ちょっと複雑な作戦を立てて、大規模な署名活動をやりました。3万人か4万人のゴルフ場反対署名が集まったかと思います。これには、神奈川県のほうが大変賢明な判断で対応をしてくださった。ゴルフ場はつくってもいいけれども、環境が本当に重要であれば規制はする。