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自然保護活動を進めるときにとても頼りになります。小網代の森はアカテガニの森、アカテガニが無事に暮らせる小網代の森、小網代の谷というのは、森があって、干潟があって、海があって、それが人工物によって分断されない生態系をもってる小網代ということができますので、アカテガニを大事にしようというと、自動的に小網代の生態系をフルセットで大事にするという啓発活動もできるんですね。
 こういうふうに使われる生き物のことを、しばしばアメリカの自然保護活動等では、傘、アンブレラという言葉を使って、アンブレラスピーシズといいます。雨傘種とやったり、天蓋種と訳したりしますけれども、アカテガニというのは小網代の生物多様性を守る天蓋種なんです。小網代の保全活動は、当初からこのアカテガニを天蓋種として頼って保全活動をするという工夫をしてきました。せっかくですから、アカテガニのお産の風景を見ていただきます。

●スライド15


 お産は、夏、7月の末ぐらいから9月の初めぐらいまで。2週間に一度、満月・新月にあわせてめぐってくる大潮の晩です。夕方7時ぐらいにアカテガニのお産があるんですけれども、そのときに合わせて、小網代の森を守る会を中心にした、市民団体が、カニパトロールをします。恥ずかしそうに3人ほど並んでいますが、頭にカニのお面を付けてるんですね。今、紙芝居やってる。ここに並んでる人たちは、これからアカテガニのお産を見ようという一般の人たちです。ある程度もう宣伝が行き届いていますので、特別に招待しなくても、夏の大潮の夕方は小網代に行くとアカテガニのお産が見られると知ってやってくる方がいらっしゃる。そういう人たちをボランティアがつかまえて、ガイドをするわけですね。ひとしきりいろんなお話をして、アカテガニの生態のお話もして、これから安全に、充実したアカテガニの観察ができるようにするから、言ってしまえば、こちらのマネージメントに従ってくださいというお願いをしてるわけです。
 実は、ここで同時に、かながわトラストみどり財団の推進する神奈川のナショナル・トラスト運動に皆さん参加してくださいというお願いもしてしまいます。ここで入会の確約を取っちゃったり、基金に積み立てるための募金をしてしまったりもいたします。いろんなマルチの仕事をする現場です。


●スライド16


夕暮れです。これは、何年か前の8月のアカテガニのお産の、ある夕方の写真です。富士山が小網代湾の正面に見えます。とっても綺麗な場所ですね。こういう状況のときに、足元にはカニがいっぱい出てきています。


●スライド17


こちらが海なわけですけれども、山側からこんなふうに岩の突き出した場所があって、そこにアカテガニがいっぱい並んでいます。全部メスガニです。お腹にたくさん卵を持っていて、ここらはちょっと卵を持ってるのが見えますけれども、潮が満ちてきて、日が暮れて、適当な暗さになるのを待ってるんですね。大体日没から30分前後ぐらいのところで、一斉に海に入り始めます。

 

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