「長靴を履いて楽しみましょう」、「マムシがいる」。こういうのは、大体人を脅かすために書いて、本当はいなかったりするんですけれども、小網代は本当にいます。下に、小網代の森を守る会と書いてあります。小網代の谷を保全する活動は1983年に、ポラーノ村を考える会とい団体がスタートしたんですけれども、その後、1990年に小網代の森を守る会というのが、以前の活動を引き継ぐ形で立ち上がって、現在はこの会が中心になって森の世話をしています。私も、この会のスタッフの1人です。
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こんな自然観察会。10年ぐらい前から、今ふた月に一度ほど実行しています。一緒に浜辺の掃除などもいたしますので、小網代の浜沿いの湿地というのはとってもごみが少なくて綺麗な湿地です。
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この森は、自然状態の完結した集水域であるというランドスケープの点からいって、それだけでも珍しい素敵なところなわけですけれども、そういう場所ですから、いろんな生息場所があって、生き物の種類という意味の生物多様性もとても豊かです。1994年段階で、暫定的な中間集計をしていますけれども、1350種類くらいが記録されていて、現在、多分もう1500、1600くらいの種数が登録されていると期待しています。今年から来年にかけて第2次の集計をする予定ですけれども。
この森を象徴する生き物で、自然保護活動にとっても応援団というか、友軍というか、共闘関係を組んできた頼りになる生き物ということで、私たちがずっと仲良くしてきたのが、写真にあるアカテガニというカニです。2匹いるように見えますが、下のこれが本体ですね。上は、これ、脱皮殻です。今ここから脱皮して抜けたばかりのアカテガニです。
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アカテガニというのは、海岸沿いに暮らしてる方はよくご存じかと思うんですけれども、陸のカニです。海辺とか川辺にももちろんいるんですけれども、山の中にもいます。スライドは、やや湿った岩にひっついているアカテガニですが、乾燥した尾根にもいますし、木にも登っている、山のカニ、森のカニなんですね。標高80メートルぐらいの一番高いところがら川沿いまで、小網代の谷全域、ありとあらゆるところにいます。ところが、このカニ、サワガニなどとは違って子どもは海で育ちますので、実は夏の満月と新月の大潮の晩に、メスガニが子どもを海に放しに、山から海岸へ出ていきます。放された子どもは、あとで出てきますが、ゾエアという不思議な幼生になって約3週間ぐらい海で暮らします。そのあと、メガロパという、また次の段階の幼生になって、10日前後海で暮らして、夏の終わりから秋にかけて、もう一度海から小網代の岸辺に戻ってきて、そこで脱皮して子ガニになって、山へ帰ってゆく。そういう暮らし方をしてるんです。親は山で暮らし、子どもは海で暮らす。生まれるのは干潟の縁。小網代というのは森のある谷と干潟と海がセットの生態系なんですが、この生態系を一つも欠かすことな く必要として暮らす、生き物です。
天然記念物のような貴重な生き物を守れというのとは別なのですが、こういう生き物は、