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講演

学校における環境教育

山極隆

 【司会】引き続きまして、山極隆さん、富山大学教育学部の教授でございます。文部省におられたときは初等中等教育局の主任視学官でございました。先生は、文部省初等中等教育局の中学校、高等学校等の視学官もやっておられました。日本生物教育学会の常任理事さん、日本科学教育学会、日本教育工学会等に属しておられます。ご専門は理科教育でございます。先生、お願いします。

 【山極】ただいまご紹介にあずかりました山極と申します。昨日の朝からずっと講座が続いておりまして、私に与えられた題目は、「学校における環境教育」ということです。

 この環境教育、昨日からいろいろとお話あったかと思いますけれども、やはり子どものときから大人になるまで、すべての年齢層にわたって、こういった環境教育、あるいは環境問題に対して、関心を持ち続けるということは非常に大事でありまして、その中でも、学校教育という中で環境教育というものを重視しています。これは、他の外国においても、そういったことに対して積極的に行っているわけであります。ただ、教育というのは、国によっていろいろと姿が異なっておりますので、当然学校における環境教育の姿も、国によってそれぞれ特色をもっております。どういうものがいいとか、どういうものがよくないとか、そういうことでなくて、その国の特色というものが環境教育にも表れているというふうに思っております。

 環境教育、学校における環境教育の狙いというのは、環境とか環境問題にまずもって関心や知識をもつこと、そして人間活動と環境との関わりについての総合的な理解と認識の上に立って、環境の保全に配慮した望ましい働きかけのできる技能や思考力、判断力を身につけ、そしてよりよい環境の創造活動に主体的に参加し、環境への責任ある行動が取れる態度を育てることであると、こういうふうにあります。

 こういったことは、もうかなり昔、ベオグラード憲章とか、そういった世界の環境教育の共通の目標にもなっているわけでありますけれども、大体各国とも環境教育の狙いというのは、大体こういったところに置いております。

 こういうことから、そこに書かれたことからもわかりますように、環境教育の狙いというのは、ただ単に子どもたちに環境についての知識とか、そういったものを与えるということ、これはやはり第一義的には非常に大事なんですけれども、それだけでなくて、やはり科学的な裏付けをもった思考とか、総合的な半日断力とか、あるいは主体的な参加、実践的な行動、そういった非常に総合的な狙いといいますか、そういうものをもっておるわけであります。

 そういう面からいいますと、今まで学校教育といいますと、皆さんもかつて受けてきてわかりますように、やはり何といっても教科、国語とか数学とか理科とか、いろいろな教科が縦に並んで、いろいろな勉強をされたかと思うわけですけれども、それぞれの教科で環境に関わる内容というのが昨今非常に重視されております。しかし、それだけでは、なかなかこういう総合的な狙いというのを達成することができない。縦割りの教科の中で勉強するだけでは、

 

講師略歴と主要著書

 東京教育大学理学部生物学科動物生理学専攻卒業、米国アイオワ州立大学留 学、文部省初等中等教育中学校課、高等学校教科調査官、のち文部省初等中等教育局主任斯学官を経て富山大学教育学部教授、日本生物教育学会常任理事。
「最新中学校理科指導講座(全5巻)」 「両生類の研究」 [創意ある中学校理科教育の理論と展開」ほか多数。

 

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