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 そういうことで、日本国内の動きというのを振り返ってみると、やはり、関係する各省庁が自らの権限と予算を増やすことに躍起になっているという印象がぬぐえないわけです。つまり、本当にこの温暖化を防ぐためにはどういう対策を講じればいいかということは一向に議論せずに、何か上からのものすごい規制とか統制色の強い法律を作ってるという。これは、私は決していいことではないというふうに思います。

 さて一体、温暖化対策としてどんな対策が考えられるのかといいますと、ここに、自主的取り組みというのと、規制的措置、経済的措置と3つ書いてあります。自主的取り組みというのは、これは経団連が自ら唱える対策でありまして、要するに政府が規制をしたり、税金を掛けたりするのはやめてくれと。自分たちはお利口さんだから、ちゃんと一生懸命やりますから、放っておいてくれというのが、経団連の立場なんです。英語でいうと、リスポンシブル・ケアというふうな言い方をするそうです。

 それに対して、規制的措置というのは、例えば何かを義務づけたり、あるいは何かを禁止したりするのが規制的措置なんです。例えばさっきのトップランナーに、要するに各家庭電化製品の効率をトップランナーに合わせろということです。こういうふうなのは規制ですね。それから、ひと頃新聞紙上には、もし二酸化炭素の排出量を5%削減しようと思ったら、次のような措置を講じなければならないという記事が去年の10月頃の『毎日新聞』に出たんです。どんなことを義務づけないといけないかというと、例えばコンビニエンスストアの午後11時閉店を義務づけるとか、これから売り出す家庭用のエアコンディショナーの冷房の設定温度を最低28度にすると。それが本当にエアコンディショナーかなという感じがしますよね。だから、例えばそんなことを義務づけるとか、これから新築の家屋を建てる人には、屋根に3キロワットの太陽電池を取り付けることを義務づけるとか。例えばそんなふうなことを、これがまさにその規制的措置なんです。

 これは、もともと、90年に比べて6%削減するというのは確かに大変なことかもしれません。なぜなら、今現在は1990年に比べて、例えば昨年度は、すでに9%も増えているわけです。9%まで増えたものをマイナス6%までもっていこうとすると、約15%ぐらい削減しなくちゃいけない。これは大変なことだと。しかし、大変なことかもしれないけれども、それを1年や2年でやれと言われてるんじゃなくて、12、3年かけて
ゆっくりやれということなんです。だから、ゆっくりやるわけですから、そんなに義務づけたり、あるいは禁止したりしなくても、十分やっていけるというのが、私の考え方であります。

 例えば、今、とにかく2010年というと今からいうと12年先です。そうすると、今、道を走ってる自動車で、2010年にも走り続けてる車っていうのは、おそらく数%でしょう。5%以下でしょう。つまり、全部自動車は置き変わっているわけです。だから、そのときに燃費効率のいい自動車にどんどん置き換えてもらえば、そうすれば随分な削減ができるわけです。現在、トラックとか自動二輪も含めてですけれども、自動車が排出してる二酸化炭素の量というのは、これは日本全体の総排出量の20%を占めてるんです。そして、もし燃費効率が20%改善されたとします。つまり、今まで10のガソリンが要ったのが、あるいは10のガソリンが要って、したがって10のCO2を出してたのがそれが8になったとします。そうすると20%削減ですね。そうすると、全体の4%を削減することができるということになるわけです。

 そして、しかも、例えばトヨタのプリウスに乗ったら、今までカローラに乗っていた人がプリウスに乗り換えたからといって、不快感は全く感じないはずです。つまり、言いたいことは、例えば自動車の燃費効率を改善するというのは、ほとんどなんの痛みもなく、しかも大変大幅な二酸化炭素の排出削減が可能だということなんです。

 そのときに、例えば、じゃあ、なるほどと、低燃費車をどんどん普及させればいいんだなということで、そしたら、この際自動車メーカーに、例えば3000?以上の自動車を作ることを禁止し
たらどうかというようなこと、これはまた規制的、規制の大好きな人の考えることなんです。あるいは、各企業に対して、会社が使う乗用車は少なくとも20%をプリウス並みの低燃費車にすることを義務づけようかと。例えばそんなことを考えるのは馬鹿げているわけです。

 

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