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 次に、共同実施とは何なのかといいますと、これは、例えば日本とロシアが次のような共同プロジェクトをやると。どんな共同プロジェクトなのかといいますと、例えば、シベリアのどこかに大変古びた、効率の悪い石炭火力発電所があったとします。それはもうそろそろ廃棄する時期にも達していると。それじゃあ、日本がお金を出して、その代わりにその石炭火力発電所を止める代わりに、最新鋭の天然ガス火力発電所をつくりましょうと。それで、日本がお金を出しますと、ロシアは場所を提供するわけです。例えばそういう共同プロジェクトが仮にあったとします。そうすると、石炭火力発電所をそのままずうっと運転していったら、2008年から2012年の5年間に、仮に100万トンの二酸化炭素が排出されてたとします。ところが、それを最新鋭の天然ガス火力発電所に置き換えれば、石炭ならば100万トン排出していたのが、60万トンに減ったとします。そうすると40万トン分減ったということになります。その減った分を両国で分け合いましょうというわけです。その40万トンを、この際折半しましょうということになりますと、そこで日本は20万トンの排出する権利を得たことになるわけで、国内でさらに排出する権利を得たことになるわけです。言い換えれば、ロシアで削減した分を日本の削減分にカウントするというわけです。

 そして、今申し上げたのが共同実施ですが、あくまでも共同実施というのは先進国間なんです。先進国同士で行う共同プロジェクトを共同実施という。それに対して、同じことを日本が中国と一緒にやったらどうなるか。それは、実は内容的には同じことですけれども、名前、呼び方が変わって、そしてCDM、つまりクリーン・デベロップメント・メカニズム・クリーン開発メカニズムという呼び方をするんです。

 以上が国際制度についての簡単な解説でございますが、京都会議以降、すでにほとんど1年近くといいますか、10カ月ほど経たわけですが、その間一体国内では何が行われたのかということを振り返ってみますと、まず正月早々に、当時の総理大臣であられた橋本龍太郎さんを本部長とする温暖化対策推進本部というのが設置されました。これを聞いて、皆さま方どういう印象をお受けになるか知りませんが、なんとなく大本営というようなことがイメージされると思うんです。おそらく38カ国の中で、その国の首相、あるいは大統領を本部長とするようなこんなものを作ったというのは、おそらく日本だけだと思います。つまり、この辺がいかにも日本的なんです。こういう温暖化対策推進本部なんていうのを設置するというのがいかにも日本。これ、大本営的発想だと、私は思います。

 そして、その後、こういう地球温暖化問題については、通産省と環境庁がずっと角突き合わせているわけですが、いずれにせよ、この環境庁と通産省との覇権争いというのは依然として京都会議のあとも続けられているわけです。そして、通産省は、省エネルギー法と呼ばれる法律を改正いたしまして、トップランナー方式という方式を打ち出したわけです。これはどういうことかといいますと、例えば同じ容量の冷蔵庫があるとします。東芝も、松下も、日立も作っているという冷蔵庫があるとします。その同じ容量の冷蔵庫を比較して、例えば仮にA社の冷蔵庫が一番省電力で、効率がよかったとします。そうすると、それをトップランナーというふうに指定するわけです。そしたら、その他のB社、C社、D社がこれから売り出す冷蔵庫は、全部、そのA社と同じ水準の省電力設計にしなさいということを義務づけるわけです。もしそのD社がいうことを聞かなかった場合、その社名を公表する。つまり、D社の冷蔵庫はこんなに効率が悪いですよということを、新聞などなどに公表する。これも何か変な感じがします。私は、こういう自由主義社会で、こんなふうな法律があっていいのかなという感じがいたします。

 それから、環境庁は、温暖化対策推進法という法律を作ったわけですが、これはほとんど基本法といいますか、基本方針みたいなものを書いただけの法律でありまして、これまた内容が非常に乏しい法律といわざるを得ないわけです。

 

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